Midnight

(4/7)
ドアを開けるとすぐ目に入るのは、真っ正面にある小さめの窓。その窓の前には木製のテーブルと椅子が一つ。


そこから右側に目を移せば、いかにも堅そうなベッドがある。


「……ま、夜は長い。シャワーでも浴びて落ち着こう……」


眠ろうと決心はしたものの、長年の習慣と恐怖は絶えず襲いかかってくる。なまえは虚勢を張る事でそれを押しやり、大丈夫だと言い聞かせながらシャワーを浴びた。


そして髪もまだ乾き切らないまま、なまえは窓の前に置かれたテーブルに肘をつく。


「もう暗いなぁー……」


時刻はもう直ぐ日付を変えようとしている。時はいつだって刻一刻と朝へと向かっているというのに、なまえに朝は訪れない。


あの日から、この桃源郷に来た今でも。


「今日こそ絶対に抜け出してやる……」


目的を見つけたこの地で、生きて行く事を決めたのだから、きっと眠れるはず。


目を閉じて唱えるようにそう呟いたなまえは、震える手で明かりを消してベッドへ潜り込んだ。



──目を開けても閉じても……真っ暗闇。











ゆらゆらと揺れる二つの身体。四方へ砕け飛んでいく血飛沫。


頭の中は真っ白。目の前は真っ暗。


何も見えず考えられないまま、気付けば最下層に堕ちていて、見上げる事すら満足に出来ない窮屈な現実。


手足には沢山の柵。
嫌な目つきの男達に嗤われ弄ばれ、日毎夜毎繰り返される行為に何度も気を失った。


もうこのまま目覚めなくていい。わたしもみんなの所に行きたい。


そう何度も思った……。


なまえは毛布を固く握り締め、小刻みに震えながらも目を閉じ続ける。過去を遡り、ひとつひとつを自分の中で整理していこうと必死だった。


それなのに……。

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