後悔と憧れ

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熱に絆され川に落ち、流石に意識が朦朧としてきた。


この旬麗という女性。一人暮らしだというのに男物の服も揃っているし、わたしに貸してくれた服は綺麗なワンピースだし……。


なんか、ワンピースってちょっと苦手。





――ドンドン。


「旬麗!アタシだよ。入っていいかい?」



ノックが聞こえる方に視線を移せば、お昼ご飯を作ってきてくれたという半おばさん。


旬麗が料理上手と言うだけあって、本調子ではないわたしも食が進んだ。


そして食事が済み、ふと窓を覗けば旬麗が洗濯物を干している。


その姿を見た半おばさんは目を細め、わたし達に感謝してると言った。



「旬麗の笑顔なんて久しぶりに見れたからね」


おばさんは溜め息と一緒に旬麗の過去を吐き出した。



「旬麗にはねぇ、そりゃあ仲の良い恋人がいたんだよ。だけど、彼は妖怪だったんだ……」



人間と妖怪。


おばさんも村人達も、異種間の交わりが禁忌とされているのは知っていたが、働き者でいい子だった二人を誰もが祝福していたと言う。



「……だけどそれも一年以上前の話さ。アンタ達も知ってるだろう?世界中の妖怪達が急に凶暴化したことを……」



それは妖怪だった旬麗の恋人とて同じ事。

完全に自我を無くす前にと旬麗を振り切って飛び出して行き、それっきりだと言う。



「その日から笑顔を無くした旬麗は、恋人がいつでも帰ってこれる様に、淋しさを紛らわす様に、いつもああやって洗濯しているのさ」




解らない。熱で頭が回らないからじゃない。
そこまで人を思った事が無いからだ。


わたしは静かに部屋を出た。

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