Sweet Pain

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八戒はわたしの向かい側の椅子に腰掛け、『どうぞ』と紙パックの牛乳をテーブルに置いた。


「……八戒、泣いてもいいですか?」


八戒は笑いながら冗談ですよ。と言うが、すぐに真剣な面持ちになる。



だよね。八戒がわざわざこれだけの為に来る訳無い。



「なまえ、まだ夜は眠れませんか?」


開かれたままの手帳に一瞬視線を落とした八戒は遠い目をして言った。



「長年染み付いちゃったもんは中々……ね」



人様が寝てる間に稼がねぇで、お前みてーな奴がいつ稼げるってんだ?



リフレインする。



九年だもんな。
日毎夜毎刻まれたものは、わたしの中でどす黒く渦巻いて止まない。



世界を抜け出しても尚……わたしの中に巣くっている。それはまるで乱麻のよう。



八戒の置いた牛乳を眺めながらそんな事を考えていた。



「……そうですか。では僕はこれで失礼しますね」


ゆっくりと閉じられるドアは、今もわたしを隔てているのだろうか。




ゴミは捨てられるもんだろ?



リフレインする。

忘れたいなんて言わないから。そんなにしつこく頭を這わないで欲しい。



紫煙と一緒に、過去の記憶も吐き出したかった。

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