Sweet Pain

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暫く紫煙に囲まれていると、悟空が馬鹿デカい声を張り上げ、ノックもせずにドアを開ける。


「なまえ!飯だ!」


八戒とはえらい違いだ。ま、悟空に八戒と同じデリカシーを求めるのは酷というものか。



わたしは重苦しい空気を煙草と一緒に揉み消して、席を立った。






「あーっ!それ俺の酢豚!」

「はっ?お前こそ俺の小籠包食っただろうがっ!」


独りでの食事に慣れていたわたしは、ここで弱肉強食を直に学んだ。



ぜーったいにマンゴープリンとライチは渡さないから!



悟空と悟浄を牽制しつつ、お目当てのデザートにありついた所で八戒が言う。



「皆さん、今日は五人部屋になりましたから」



爆弾発言をサラッと言ってのける神業は、八戒のみに許された特権だ。



文句なんて言える訳無ーい。言ったら最後。あの黒オーラに喰われてしまう。



流石に皆もそれを理解している様で、宿に着くと渋々部屋を移動した。



うん、間違い無い。八戒の仕業だ。



わたしがこっそり八戒を覗き見ても、しれっとした顔にはいつもの笑顔。


その深い緑色の目は、わたしを何処まで映しているんだろう。




八戒の優しさがわたしの胸をチクリと刺激した。


その痛みは何という痛みだったか……。
久しぶりに感じたよ。


温かい痛み。

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