身の程を知れ

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「なまえちゃーん、そろそろ三蔵を許してやってもいいんでない?」


颯爽と部屋を出たはいいものの、なまえのこの姿を人目に晒すのは憚れる。普段身に付けているフードも無く、惜し気もなく露出された素肌と魅惑的な顔で淑やかに振る舞うなまえは、もっと危機感を覚えるべきだと、悟浄は煙草を咥えながらなまえの手を引く。

決して疚しい気持ちがあるわけではない。連れが居るということをアピールしているだけだと言い聞かせるが、悟浄がなんとも役得であると思ってしまうのも致し方無い。擦れ違う人々の視線がなまえに向けられるたび、優越感に浸りながらその者を睨み付けるのだ。


「……私だって、役に立ちたいのに」


ポツリとなまえから零れた言葉に、悟浄は目を細める。突然この世界に放り込まれて妖怪退治の旅をする羽目になったなまえが、誰よりも仲間に憧れていることを、あのカミサマとの対決の時から悟浄は良く知っていた。自分に力が無いと思っているのか、たいそう自己評価が低いのが珠にキズだが、その小さな身体であの三蔵とやり合うのだ。見事としか言いようがない。


「でも、オレ、なまえちゃんのそんな姿、他のヤツに見せたくないんだけど?」

「……チビ猿なのに?」


やれやれと息を吐き、この借りは高くつくぞと三蔵に思いを飛ばしながら、悟浄はなまえと向かい合う。まったく損な役回りになってしまったが、三蔵のあんな顔を見れたんだ。貸しは貸しだが、今はそれでよしとしよう。そう思い直した悟浄は、なまえを止めるべく尽力するのだ。


「なまえちゃんだって、本当はわかってんだろ?三蔵がなまえちゃんを心配してるって。……ま、口は悪過ぎだけど」

「それは判ってるけど……。あんなに全否定されると……ムカつく」

「まぁなー。でもなまえちゃんも、あんな提案、三蔵が許すワケないってわからない?」

「なんで?」

「うーん、ま、ここらが潮時かなー」


誰に聞かせるわけでもなく、悟浄がそう呟いた。なまえはただ悟浄を見上げながら、今言われたことを頭の中で反芻する。三蔵はいつも肝心な言葉を言わないことが多い。なまえは少なからずそれをよく知ってはいるが、たまにそれが無性に腹立たしくなる時があるのだ。今日のように、遂に役に立てる機会がきたと思った矢先、それを挫かれた時の無念がなまえを襲ったのだ。


「なまえちゃん、オレのエスコートはここまでだよ」

「え?」


悟浄が顎で示す先には、三蔵法師と呼んでいいのかと疑いたくなるほど鋭い目付きの三蔵が立っていた。煙草を咥え、腕を組み、紫暗の瞳を真っ直ぐなまえに向けていた。その三蔵は、悟浄と入れ替わるようになまえの隣に立ち、そのままなまえを引き連れて歩き出した。


「三蔵も気の毒に」


紫煙を燻らせながら吐き出した言葉に、三蔵が一瞬だけ振り返り、悟浄の背筋がゾワゾワと震える。なまえを足止めしておいてやったんだから、少しくらい大目に見ろよ。そう三蔵の背中に呟いた。

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