Despair
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携帯と社員証を眺めたまま呆然としていると、急に背後から声がした。
「博士も統括も君を獲るために必死だな」
朱いコートを翻し、ベランダから現れた彼は微かに笑みを浮かべている。
「盗み聞き?」
ジェネシスは妖しい顔で流れる様に近付き、私をサッと抱え上げた。
「ジェネシスっ?」
「掴まって。ここじゃ落ち着いて話も出来ないだろう?」
そう言ってベランダを飛び越え、私はジェネシスの部屋で足をついた。
ジェネシスのここでの地位を物語る様な、黒と赤を基調とした、上品な調度品。
「広っ―……」
部屋は隣でも造りは全然違う。さすがクラス1st。
「立ってないで座りな」
ジェネシスはソファーに腰をおろしグラスを二つ並べ、隣に座れと合図する。
遠慮がちに少し離れて座るが、すぐに距離を縮めるジェネシスは私をジッと覗き込む。
「これからどうするつもりだ?」
そう言って私の髪に触れるジェネシスは真っ直ぐに見据える。
転送装置だと言われたピアスも壊れ、それを直せる宝条は私を帰す気は無いと言った。私が帰る為には、統括に従いながらその方法を自分で見つけるしか無いんだとわかっていた。
「統括にお世話になった方が得だよね?」
私は自分の選択を肯定して欲しいが為にジェネシスに聞いた。
「賢明だな」
それしか無いもんね。
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