Around
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「だから抵抗しなかったのか?」
「違います!」
微かに笑いを漏らすセフィロス。今はそんな気遣いは要らないよ。……どうせならトレーニング中に優しくしてくれればいいのに。
「フッ、ならば無理な相談だな」
「……最初から期待してないし」
私はそう言いながらベッドをすり抜け、床に落ちていたシャツを羽織り、無言でバスルームへ向かった。
熱いシャワーを全身に浴び、たちまち私の体から彼の残り香が流れていくと、自分の浅ましさに思わず自嘲の笑みが漏れ、浅はかな自分に嫌気がさした。
バスルームを出て着替えを済ませ、鏡の中の自分に問い掛ける。
きっと私は帰れるよね?
不安気に私を見つめるのは私自身。そんな今、希望と諦めを天秤にかけたら一体どちらに傾くんだろう。
そんな事を考えながらバスルームを後にすると、セフィロスがリビングにあるソファーに座り、眉間に深い皺を刻んでいる。
そして静かに歩み寄った私に気付いたセフィロスは、ゆっくりと顔を上げて私の腕を取り上げた。
「俺は……壊すべきものを見誤ったようだ」
──この人にこんなにも真っ直ぐに見据えられて、ドキドキしない人なんていない。
「何言って……」
この世界に私の居場所は無いはずなのに、彼の言葉に戸惑う私を引き寄せた彼の腕の中は、確かに確かに……温かかった。
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