Rainy Day
(5/6)
大雨が降りしきる中、家へ着くと直ぐさま彼女をバスルームに送り込んだ。
俺はその間に服を脱ぎ、とりあえず体を拭きながら窓から外を覗く。
未だ止む気配の無い雨は、シャワーの音さえ掻き消そうとばかりに激しく全てを叩いていた。
「ほんと鬱陶しいよ、お前」
次々と落ちては跳ねてゆく雫のひとつひとつに向けてそう呟くと、シャワーを浴び終えた彼女が後ろで笑う。
「独り言かと思ったら、雨に向かって話してたのね」
彼女の動きに合わせて僅かに蒸気が揺れると、すっかり温まった彼女が俺の隣に並び、俺と同じように外に視線を向けた。
「今日が大雨でよかった……」
何かを堪えながらも至極穏やかな声で言って退ける彼女にとって、俺よりもこの大雨の方が安らぎになっているのがもどかしい。
更には、どう足掻いても俺にその代わりは出来ないとあっては、鬱陶しいなどと言いつつも羨んでしまうのも確かだった。
「今日みたいな日は、最悪な日……よね?」
「んー、稀にみる最悪な日だろうね」
彼女の頭を撫でて肯定すると、彼女の瞳からは堪えていたものが溢れてくる。俺は、そのひとつひとつをゆっくりと集めて抱きしめる。
──思い出す日は少ない方がいいよね。
そう、彼女は救いを求めた。抗う事の出来ない任務によって犠牲になった全てに、せめてもの救いを『最悪の日』に求めたのだ。
皆が上を向いて笑う晴天の日より、皆が顔を疎ましがる最悪の日。
残された者にとって、それが針穴ほどの光にすらならないと解っていても、背負う事の出来ない命に押し潰されながらも割り切れずに居る彼女は、それにも救いを求めたのだ。
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