モテる男はお辛いですか?B

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雨足が強まる中、任務を終えたばかりの俺は帰り道でゲンマに出くわした。俺の家の先にある忍具屋に用があるらしい。



しばらく歩いていると、ゲンマはなまえの事をもっと考えてやれと言うが、俺だって内心はそうしたい。



『更紗姫の機嫌を損ねれば里に多大な影響を及ぼすかもしれん。粗相の無い様任務にあたれ』



俺の任務は単に更紗さんの相手をするだけじゃない。
今は表立って戦火をあげないかわりに、水面下で情報合戦による探り合いが行われる。



火の国の大名達を束ねる更紗さんの父親は独自の情報網を持っている為、里にとって重要な格付けがされているのだ。


俺は男である前に忍。里にとって重要な任務を任されている。


そう思ってやってきた俺は、なまえより更紗さんを優先していた。


なまえなら解ってくれると思って……。


でもこれは俺の甘え以外の何ものでも無い。
それでも任務となまえの間に立たされれば、甘えられる方に甘えるしか無かった。



俺の家が見えてくると、家の前に人影が見え、雨音混じりになまえの『帰ってよ』という声が響いた。



なまえは理由も無く人を傷付ける様な事はしない。それでもなまえのあんなに冷たい目は初めてだった。



なまえに駆け寄り抱き締めたくも、これは任務だと言い聞かせ、立ち尽くしているなまえに背を向けた。



雨に巻き上げられた百合の香りの所為で、俺の敏感な鼻はなまえの匂いを求めていたのに……。


今俺は、熱に魘された更紗さんの宿に居る。

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