ただの下忍です
(3/9)
「お手を煩わせてしまい、すみません」
静かになった受付室で、なまえは静かに綱手様に頭を下げる。
それはまたしても周囲の注目を集めたが、なまえは構わず深く頭を下げていた。
「お前のせいじゃないんだ。気にしなくていいさ」
評価してもらう場所さえ与えられなかった悔しさをグッと堪え、綱手様の言葉に小さく礼を言ったなまえの表情は、見ているこちらの方が痛々しく思う程だ。
そんななまえが頭を上げ、俺の方へ近寄ってくる。
やり切れなさを隠す様に、ふーっと息を吐きだしたなまえは、俺の前まで来て口を開く。
「今日はもう終わり?」
「この報告書を提出したら終わりだよ」
指に挟んだ報告書をひらひらさせてそう言うと、なまえはこの場に似つかわしくない何とも不適当な笑みを向け、『じゃちょっと付き合って』と俺を急かした。
「何する気?」
「ちょっと体を動かしたくて……。あ、疲れてたりする?」
「ま、多少疲れててもお前の相手くらいなんて事ないよ」
手早く報告書のチェックを済ませ外へ出ると、陽が隠れ始めた里は夕暮れ。橙色の空が、ゆっくりと夜へと準備を始めている。
そんな夕方と夜の境目の刻に、俺は半歩下がってなまえの後を歩いていた。
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