ただの下忍です

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「お手を煩わせてしまい、すみません」


静かになった受付室で、なまえは静かに綱手様に頭を下げる。

それはまたしても周囲の注目を集めたが、なまえは構わず深く頭を下げていた。


「お前のせいじゃないんだ。気にしなくていいさ」



評価してもらう場所さえ与えられなかった悔しさをグッと堪え、綱手様の言葉に小さく礼を言ったなまえの表情は、見ているこちらの方が痛々しく思う程だ。


そんななまえが頭を上げ、俺の方へ近寄ってくる。
やり切れなさを隠す様に、ふーっと息を吐きだしたなまえは、俺の前まで来て口を開く。


「今日はもう終わり?」

「この報告書を提出したら終わりだよ」


指に挟んだ報告書をひらひらさせてそう言うと、なまえはこの場に似つかわしくない何とも不適当な笑みを向け、『じゃちょっと付き合って』と俺を急かした。



「何する気?」

「ちょっと体を動かしたくて……。あ、疲れてたりする?」

「ま、多少疲れててもお前の相手くらいなんて事ないよ」



手早く報告書のチェックを済ませ外へ出ると、陽が隠れ始めた里は夕暮れ。橙色の空が、ゆっくりと夜へと準備を始めている。

そんな夕方と夜の境目の刻に、俺は半歩下がってなまえの後を歩いていた。

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