隙間から覗く君

(2/7)
あの任務以来、少しだけ期待していた変化も何事も無く、またいつもの距離に彼女は居た。


「なんだかなぁ……」


夕暮れ時の待機所にて零れたぼやき。それをいち早く拾ったのはアスマだった。


「また何をぼやいてんだよ」


もくもくと紫煙を撒き散らしながら、からかう気がまる見えのにやけ顔。そんな顔のやつとはまともに語り合える気がしない。


「ほっといてちょーだい」


そう言って、どことなく面倒臭い事になりそうな予感がした俺は、そろそろ帰ろうかなと立ち上がり、アスマの横をすり抜ける。

そして、腰のポーチから愛読書を取り出そうとしたが、ちょうどその時を見計らったかのように背後で呟くアスマの声に時を止められ、俺の手から愛読書が滑り落ちた。


「落ちたぞ」

「……知ってるよ」


辛うじてそう答えたものの、取り繕えるレベルを超えた俺の動揺は、言うまでもなくアスマの餌食となってしまった。


「……嘘でしょ?」

「さあな。紅の話では相当面倒臭そうな事になってたな」

「……そう」


やっとの事で手を伸ばせた愛読書。それを拾い上げようと屈んだ俺の背中をバシッと叩き、いつもより鬱陶しそうに紫煙を吐いてアスマは待機所から出て行ってしまった。


「なにやってんの……」

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