隙間から覗く君

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次から次へと降りかかる厄介事に悩みは尽きないが、そんな気持ちとは裏腹に体は動く。


あちらさんからのご指名とあっては、有り難いったらありゃしない。

まったく、どういう付き合いをしてきたんだ!……なんて、声を大にして言えたら楽なんだろうな。


「はぁー……。行きますか」


いつの間にか着いたとある居酒屋の前で溜め息をひとつ。そして、やけに重く感じるドアを開けて中へ入ると、更に重苦しい空気が纏わり付いた。


「あ、カカシ!早くこっちに来て!」


奥の小上がり席で、俺に気付いた紅が声を掛ける。そして、その紅の向かいにはアスマも座っていた。

テーブルの上には全く手の付けられていない料理と、グラスを伝った水滴が広がっている。
当然、この様子ではとても良い話は聞けそうに無い。二人の顔もそう言っている様だ。


「……で、俺はどうすればいい訳?」


アスマの隣に胡座をかくと、紅が事の次第を話し出した。


「今日はなまえと食事をして帰る予定だったから、二人でこのお店に向かってたのよ。……そうしたらね、偶然だと思うけど、あの『噂の彼』に呼び止められたのよ……」


紅は、自分の後ろに位置する座敷のひとつをチラッと見ながら声を潜める。そして、その『噂の彼』について話しはじめた時、その座敷から怒号が聞こえた。


──お前、それでも人間かよ!


ざわついた店内ではそれ程気にならないであろうその声も、忍である俺達からしてみれば十分に大声だ。


「確認の為に聞くけど、なまえはよりを戻すつもりは無いんだよね?」


心なしかトーンの落ちた俺の声に、二人は力強く頷く。


「それだけ解れば十分だ。行って来るよ」


すーっと集まる感情を握り締めて立ち上がった俺は、その怒号が聞こえた座敷の襖に手を掛けた。

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