抜け落ちていた過去

(3/4)
「今日は巻き込んじゃってごめんね」


酷く疲れた顔を隠すように俯いたなまえは、そのまま床に視線を移してため息を吐いてから窓の方を見やった。
そこからチクリとした視線を感じてはいたが、なまえの話と関係があるだろうと踏んでいた俺は、あえて何も言わずに、なまえの次の言葉を待っていたのだ。


「……やっぱり気になるよね?」


辛うじて聞き取れるほどの小さな声は、これからの話が幸先のいいものではないという事を顕著に表しているようで気が重い。しかし、それでも俺は知りたかった。


「あれって、さっきの暗部?」

「そう。ユユって言って、ずっと一緒に任務してるの」


ずっと一緒に……。
その言葉が指すのは俺だけだと思っていたのに、こうもあっさりと崩されてしまうものだろうか。俺の知らない部分を知っているだけでなく、なまえにそう言わせるほどの関係がなんとも腹立たしい。
なまえが任務だと言ったにもかかわらず、俺の中にこういう感情が生まれるという事は、俺も相当なところまできてるんだと改めて実感する。


「お前って、結構危ない任務してんだね」


心中を悟られないように、何食わぬ顔でそう言った俺になまえは苦笑する。


「もしかして、私の任務わかっちゃった?」

「ま、何となく全部繋がったかな」


あの時の言葉の背景にあるのはこれなんだろうな。そう思うと、果てしなく遠くに彼女が居るような気がしてならなかった。

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