規格外理論への溜め息

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「なまえが思ってると同じくらい……いや、それ以上にカカシさんはなまえを大切に思っているよ」

「……なんでそんなにカカシの肩を持つの?」

「あのねー、僕はカカシさんの肩を持つ訳ではないよ。見てれば誰だって判る事を言ってるだけ!」


先ほどまでのシリアスさは何処へ行ってしまったのか。きっと、カカシと一緒に出て行ったに違いない。ユユは痛みを増す頭を遠慮無く抱えた。いい大人がこの様では、今後の任務の先が思いやられる。


「だいたいユユが言ったんじゃない!カカシとあやふやな関係は止めろって!だから私は……!」

「バカなの?なまえって本当にバカなの?」

「待って、それ酷くない!?」


なまえは思わず身体を起こし、ユユに思いっきり抗議の意を上げた。この先もカカシの存在は必要不可欠。ならばいつ別れがくるかも判らない関係より今のまま居られればいい。カカシが居る、それだけで十分。そう思ってユユの言う中途半端で曖昧な関係に線を引いたというのに。どんな思いでこの結論を出したか知りもしないくせにと、なまえはユユをキッと睨んだ。

熱くなるなまえとは裏腹に、ユユは全身から力が抜け落ちていく。まるで魂まで抜け落ちてしまうのではないかと思うほど、身体中の力という力が脱力していた。


「なんでそっちに振り切るかな……」

「ちょっとユユ!もうなんなのよ!」


ユユはなまえに憐れみの目を向け、心の中ではカカシに何度も謝罪した。ユユはもう認めざるを得ないのだ。初恋を拗らせたなまえがあらぬ方へ結論付けてしまった理由は自分にあったのだと。


中途半端な関係は心に隙を生む。ユユは確かにそう言ったが、その言葉の先には"そろそろお互いの気持ちをちゃんと伝え合うべきだ"と含ませていたはずだった。あれほど思い合っている二人があるべき形に収まれば、それは時に弱さにもなり得るかもしれないが、それ以上に強さにもなる。確たる関係を築けばなまえはカカシという心的強さを得るだろう。カカシを見て思うに、それはたぶん、生涯に渡って。だからこそグダグダ言ってないで白黒つけてこい……とユユは発破をかけたつもりだったのだが、なまえには伝わっていなかったのだと、ユユは力無い溜め息を溢した。


「……カカシさんって、本当によく出来た人ですね」

「え、またそこに戻るの!?」

「もういいから……なまえは暫くゆっくり休んでてよ……じゃあね」

「急になに?」


ユユは遠い目をして立ち上がり、ふらつく足で病室を後にした。今回の任務失敗の原因はどこにあるのか。それを考えたユユは、頭だけではなく胃までキリキリとしてきたなと、乾いた笑みを浮かべた。今後の事を考えれば何とかしてあげるべきなんだろうが、なまえの規格外の断案を下した背景を知ったユユは、初恋の恐ろしさに身震いしつつ、背中を丸めるようにしてその場から離れた。


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