ヘタレとぽんこつ

(2/5)
任務を終えた帰り道。カカシは同じく任務を終えたアスマと出会し、近くの居酒屋で軽く一杯と強引に誘われた。なまえはまだ入院中。これといった用事も無かったカカシは断り切れず、アスマから小言を聞かされるであろうと覚悟を決めて店へと入って行った。


「なまえ、やらかしたみたいだな」

「まぁね」


注文した物がテーブルに並んだところでアスマは呆れ半分、揶揄い半分といった顔で煙草の煙を吐き出した。極秘任務だが、便宜上『元忍と交戦になりなまえが負傷した』という表向きの報告が上がっている。しかし、忍を長く続けていればそれが本来の理由ではないと察することは容易い。守秘義務があるのを判った上で推測し確信を得るなど簡単なことなのだ。勿論、表立ってはしないのだから、忍の腹はいつだって真っ黒だ。忍たる者、表では忍ぶものなのだ。


「あと二、三日で退院できるって聞いたけど、お前も気苦労が絶えないな」

「……まったくだよ」


アスマはカカシの疲れたような顔をニヤリとしながら見る。普段通りを装ってはいるが、付き合いの長いアスマにはカカシの心情が手に取るように判った。短くなった煙草を揉み消し、胸の内に漏れる溜め息をビールで流し込んだ。


「ついててやらなくていいのか?」

「あぁ。あの暗部もついてるし、思ったより元気そうだし大丈夫でしょ」

「……へぇ。珍しい」


目を丸くしたアスマは、訝しげな目を向けるカカシに、それはこっちの方だと言わんばかりに訝しげな目を返した。いつもなら言うまでも無くなまえの世話を焼くであろう男が、なまえを他の男に任せることを良しとして目の前で酒を呑んでいるのだ。アスマはカカシが普段と違うと感じたのには自信があったが、その心情の中身はどうやら自分の考えているようなものではないのかもしれないと、心内で驚愕した。
なまえを心底心配しているであろうことは読み取れるが、普段のカカシを知っているアスマは、今、なまえの傍に居るのがカカシでは無いということが、どうにも信じられなかったからだ。


「とうとう諦めたのか?」

「まさか」

「じゃなんでこんな所に居るんだよ」

「お前が俺をここに連れて来たんでしょ」


アスマは片眉を上げた。カカシがいつもと違うのは見て判っているのだが、その種類が違うとでも言えばいいのか、どこか腑に落ちないのだ。本来あれこれ騒ぎ立てるような男ではないが、なまえの事となれば話は違ってくる。なまえの事は全て自分に任せろとでも言うように周りを遮り、それが自然な流れと世話を焼くのだ。もちろんなまえにはそれを悟られないよう徹底し、周りがそんなカカシをいつも生温かい目で見ていても、当の本人はノーダメージどころか、下手をすると周りがダメージを受ける羽目になる。一途過ぎると言えばまだ聞こえはいいが、あれは過保護を通り越して依存だと言ってもいい。


「心配じゃねぇのか?」

「まぁ、聞いたときは心臓が止まるかと思ったけど、朝に顔出したら元気そうだったし」

「そうじゃねぇよ」


苛立ちなのか呆れなのか、アスマは顔を引き攣らせながら新しい煙草に手を伸ばした。何がどうなってんだと、煙草を大きく吸い込みながら、この妙に落ち着き払ったカカシを神妙に見やった。


「俺は、他の男になまえを任せといて心配じゃねぇのかって聞いてんだよ」

「……何で?」


大の大人が見つめ合う。一人は目を丸くし、咥えた煙草を落としそうなほど口を開け、もう一人は、そんな事を聞いてくる方が不思議だと、目の前の男を訝しんでいた。


.
- 76 -

ListTopMain

>>Index