ヘタレとぽんこつ
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それから数日後。なまえはめでたく退院し、先の任務失敗についてのお咎めと事後処理に追われていた。それもそのはず、件の組織がなまえをターゲットにしたという情報を暗部が得たからだ。一時はこちらを警戒して雲隠れされ、もう追跡は不可能かとも思われたが、またなまえに近付こうとしてきているのだと、とある暗部から報告が入った。
「目的は不明。しかし、必ず接触してくるはずだから、普段通り過ごしていても警戒は怠らないように。なまえ、いいね?」
「わかった」
ユユはなまえにそう伝え、監視任務に移る。一度失敗しているが故に、同じ失敗はもうできないと、大きく深呼吸をしてから獣面で素顔を隠した。どこから接触を試みてくるか。暗部の面々と神経を尖らせる日々が続く中、事態は思いもよらない局面を迎えていた。
『ねぇ聞いた?カカシさんとなまえ、完全に終わったらしいわよ』
『任務そっちのけでカカシさんを追いかけていたなまえに、カカシさんが呆れて遂に見捨てたって話?』
『いや、俺が聞いたのはカカシに付きまとわれてばっかりだったなまえがとうとう愛想を尽かしたって聞いたんだけど?』
それはなまえの入院中からまことしやかに流れていた噂に過ぎない。そう、噂に過ぎなかったのだ。しかしそれは尾ひれどころか人々の願望も合わさり、瞬く間に里中を駆け巡った。普段なら天変地異が起こってもそれは有り得ないと一蹴りされようものだが、今回ばかりは違った。あのカカシが入院中のなまえを暗部に任せたままにしていた上に、なまえもそれで良しとしていたのが、奇しくも信憑性を持たせる結果となってしまったのだ。
二人の心情などお構い無し。噂がここまで大きくなったのはこれまでの自業自得とも言えるが、今までの二人を知る者までもが信じられないと思いつつも、今回ばかりはもしかして、と信じつつあったのだ。
「……大変なことになりました」
ユユはカカシとなまえに心労を隠すこと無くそう溢した。それもそのはず。その噂が広がってからというもの、カカシやなまえに近付いてくる人物が多いこと多いこと。カカシは文句無しの里のエリート、なまえもあの収容所の最高責任者の一人娘である。挙がる手は後を絶たなかった。
カカシはそんな環境に多少は耐性があるようだが、問題はまたしてもなまえだった。長らく里を離れていた彼女には、耐性どころか異性への免疫が極端なのだ。何しろ彼女には、男性と言えば父親と任務を供にする忍と、あの"はたけカカシ"しか居ない。任務とあればいくらでも男をあしらえる彼女だが、プライベートとなれば案の定───ぽんこつと呼ばざるを得ない。
「いちいち動揺するのはやめて。只でさえこっちは神経を張り詰めているんだから、なまえもちゃんと見極めてくれなきゃ困るんだよ」
「……ごめん。びっくりしちゃって……」
ユユはなまえにそう言った後、カカシに目を向けた。この男がなまえを大事に大事に囲っていた責任は重い。いくらなんでも酷すぎると、ユユは自分が発破をかけたことを棚に上げてもおつりがくるんではないかと、静かに息を吐いた。
なまえは自分の弱さを相手の組織の人間に露呈してしまっている。またそこが狙われるかもしれないということは誰もが懸念していることだろう。だからこそ今回はなまえだけで無く、カカシの周囲にも警戒範囲を広げていた矢先のことだった。
「前回の任務失敗を受けて、相手がカカシさんにも揺さぶりをかけてくることが予想されます。任務の詳細を控えさせていただくのは申し訳ないですが、カカシさんの方もご協力をお願いします」
「了解」
「ありがとうございます。……そしてなまえ」
カカシが頷いたのを確認したユユは、痛む頭を押さえながらなまえに向き合った。カカシの居る手前あまり気が進まないが、任務のためだと言い聞かせて割り切ろう。ユユはそう気を取り直して口を開いた。
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