未熟者は敗れ、去る

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退院してやっと落ち着くかと思えば任務の後処理とお説教。これは自分の責任だから甘んじて受けるべきものだからいいとして。いつの間にやら広まった噂により囲まれるのは迷惑この上無く、そのせいでユユに小言を言われたなまえは解せないといった表情を惜し気もなく晒していた。そんななまえのとばっちりを食らう形になってしまったカカシもまた、同じような顔をしてなまえを見つめていた。


「はぁ……。わたし、こっちに帰って来てからダメダメだ……」

「ありがたいことに次があって良かったじゃないの」

「……うん。本当にそう思う」


なまえは自然と歪んでしまう顔をカカシに見せないようにと両手で顔を隠す。何だかんだ言ってもこうなったのは自分のせいだと一番理解しているであろうなまえは、カカシの前でだけはこうして弱さを垣間見せるのだ。もっとも、昔に比べたら随分と控え目ではあるが、なまえがカカシの前で弱音を吐くようにずっと仕向けてきたのはカカシなのだ。


「わたしはもう失敗しない。大丈夫。大丈夫」


小さな声で、まるで自分に言い聞かせるように呟いているなまえの頭に、カカシは優しく手を乗せて撫でる。どこまでも優しい手と目はなまえだけに向けられ、いつだってなまえの背中を押し続けるのだ。


「なまえは大丈夫だよ」


そんなカカシの言葉になまえはいつだって励まされる。一番追い付きたくて、永遠の好敵手とも言えるカカシは、いつだってこうしてなまえに自信をくれるのだ。どんなにみっともなくても、情けなくても、カカシは絶対に受け入れてくれるという安心感がある。だからこそこうして今も、なまえは安心して弱さを見せられるのだが、やはりそれでも全てではないし、出来るだけ見せたく無いというのが本音だ。

カカシに対する絶対的な信頼感は、長年過ごした中での絶妙なバランス感の上で存在しているということを、なまえはよく理解している。底無しにカカシに寄りかかってしまえば、それはただのお荷物になってしまう。自惚れる訳では無いが、カカシはそれでも受け入れてくれるという自信があるからこそ、なまえはそれに反発していくことで先へ進む原動力にしている節もあるのだ。

なまえはカカシに寄りかかりたいのでは無く、カカシと同じ場所に辿り着きたいと思っているのに、それでもこうして甘えてしまう自分に呆れてしまう……というなまえの心情なんて、カカシはとっくの昔にお見通しである。


「なまえに無理するなって止めるのは諦めてるから、無茶だけはしないでよね」

「……判ってる。ありがとう」


なまえのその様子を見てカカシは安堵の息を吐いた。こうやって軽く弱みを見せてくれる内は大丈夫だとカカシは知っているのだ。なまえが本当に駄目な時はどこまでも自分を追い詰めてしまうという、なんとも厄介な性格をしている。そこまでいかなければ、というより、そうなる前にカカシはなまえを甘やかすのだ。もちろん、その役を誰かに譲るつもりはこれから先も無い。なまえの愚痴を聞く役はあのユユに任せられても、美味しいところを持っていかせる訳にはいかないと警戒していたカカシだが、ユユはその気は持ち合わせていないと断言できる。

なにしろ、この部屋を出て行く時、罪悪感を一杯にして後は頼んだとばかりの顔をカカシに向けたからだ。手がかかり過ぎて面倒だとカカシになまえを丸投げするのだから、ユユはたいへん優秀だとカカシは考えを改めた次第である。


「よし!明日からはもう大丈夫!」


勢いよく立ち上がったなまえの背に思わず手を伸ばしてしまいそうになるも、カカシは笑みだけをなまえに向けた。大丈夫、大丈夫と、なまえのように心の中で自分に言い聞かせていた。

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