想い、出逢いA

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カカシの顔を見るのも出来ないくらい頭の中が真っ白になって、それでもカカシに何か言わなきゃと口を開いても、結局何をどう言えばいいのか解らない。



言葉を紡ごうとするほど舌はもつれ、この場の空気に焦りだけが助長されていく中で、カカシは静かに口を開いた。



「似てた……ネ」



その言葉に緊張が走った。やましい事なんて無いはずなのに恐る恐る聞き返す。



「誰……に……?」



カカシは私の過去を文面で全て知っている。だけどあの人の姿は知らないはず。知らないはず……。



「なまえの……」



いつの間にか左目の熱も忘れ、私は茫然としたままカカシを見上げてた。


「何で……知って……」


心の中で"違うんだよ"と叫んでもそれを上手く説明出来ない。カカシはそんな私を腕の中にすっぽりと包んで抱き締め視線を合わし、そして微笑みながら私の左目に指で触れた。


「うん、前に一度。……初めてなまえの家へ行った時にネ」


「……そっか。あまりにも似てたから……びっくりしちゃった」



カカシはそれ以上この事には触れなかった。それがカカシの優しさであり今のカカシが唯一出来る事だと解っていた私は、徐々に込み上げてくる罪悪感を抑えつけるのに必死だった。



「さっ、明日も薬草採りに行くんでしょ?早くお風呂に入ってきなヨ」



絶妙な間とタイミング。カカシは場の空気と私の心を読むスペシャリストだ。だから頷いてバスルームに入った途端に涙が溢れた。



カカシ……、違うんだよ。この涙は……あの人を思っての涙じゃないから。



嗚咽がカカシに聞こえない様に、シャワーを勢いよく流して口を塞いだ。

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