想い、出逢いA

(6/7)
出会いが先か、別れが先か……。

なまえがバスルームに向かった後、俺は頭を悩ませていた。




幸せなままの突然の別れは、なまえの心の時間を止めた。心残りと一言で言ってしまえば簡単に聞こえるが、なまえにとって最愛の人との永遠の別れそのものが心残りだった。



どうして自分も連れてってくれなかったのか、一緒に居られなくても彼だけは生きていて欲しかったと、なまえは記憶の中で何度も繰り返し嘆いた。

その左目に亡き彼を焼き付けて。



それでも五年という歳月に培われ、独りでするしかなかった心の整理で出来た空間。そこへなまえは俺を招き入れてくれた。



しかし独りでは片付け切れない思いは残る。



無理も無い。嫌いになった訳でもない。忘れようにも光を失った左目は映す。穂積さんを映し、亡き彼を映し、なまえの悲しい過去を呼び覚ます。



だから俺は不安で仕方ない。なまえを思うと息が詰まるんだ。

きっとなまえは俺の前では平気な振りをするよネ。そんななまえを思うとやり切れないんだヨ。



俺の前で泣いていいのに。例え泣いても、なまえの気持ちを疑ったりはしないのに。




それでもなまえは俺の前では泣かないんだ。自分の事じゃ絶対に涙を見せようとしないんだ。


今までそうやって乗り越えるしか無かったなまえだから……。



だからバスルームから出て来たなまえの目が赤くても、俺は気付かない振りをするヨ。

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