想い、出逢いB

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慌ただしい院内には未だ顔を見せぬなまえの無事を願うカカシとゲンマの姿。


その時すでになまえが治療室に入ってから二時間が経っていた。



「なぁ、カカシ。……何で"ありがとう"だなんて言ったんだ?」


千本を器用に揺らしゲンマが尋ねる。


「……穂積さんが無事だったから……さ」


「どう言う意味だよ」


二人は視線を治療室に向けたまま会話を続ける。


「なまえがさ、恋人を亡くした事は知ってるよネ?」


「あぁ、そん時に左目が見えなくなったんだろ?」


カカシは目を伏せて頷き、大きく息を吐いてなまえを思った。


「その恋人、穂積さんにそっくりなんだ……」



ゲンマは目を見開きハッとする。そしてカカシが何故穂積に"ありがとう"と言ったのか理解した。


「ゲンマも見た事あるよネ?あの車ってやつ。それに乗ってたら別の車が突っ込んで来たんだって……。そしたらその恋人がさ、なまえを庇って自分の方にハンドルを切ったんだって……」



その時飛び散ったフロント硝子はなまえの左目の視力を奪い、その予期せぬ惨事はなまえから恋人までもを奪った。



なまえはきっと、その見えない左目でその時の記憶を見ていたんだ。


「だから穂積さんの手を掴まなかった……いや、掴めなかったんだよ……」


──あの人にだけは生きていて欲しかった。



「だから"ありがとう"なんだヨ」

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