嫌になる程抱きしめて

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「おい!こいつは本当に別の世界から来たと噂されている奴なのかっ?」

「えっ、あの、この本を書いたのは間違い無いですが、どこから来たか……までは……ちょっと……」

「ばかやろうっ!そんな不確かな情報で、あの"はたけカカシ"の所から命懸けで連れて来たって言うのか、お前はっ!」




──なんか、可哀相な人達だな。


半ば自分の置かれている状況を忘れつつあったなまえは、二人のやり取りが尚も続く中、カカシの助けはまだかなと窓に視線を放った。


ここは山小屋だけあって外はもう暗い。周りの木は余程高いのか、星の明かりすらも見えなかった。


カカシが帰ってくる頃を見計らって、せっかく作っていた夕食も冷え切っているんだろうな……なんて、この場に似つかわしくない事ばかり考えていると、二人の矛先がなまえに向かう。


「おい!お前!お前は異世界から来たんだろっ?そうだよなっ?間違い無いよなっ?」


この場合、どう答えていいものか。自分が異世界人だと言ってしまってもいいのだろうか。しかし、別の世界から来たと言ったとしても、飛行機や新幹線の事など答えられない。


なまえは二人の男に睨みつけられたまま、しばし頭を悩ませ、とある決断を下した。


「ごめんなさい。人違いです」

「はぁーっ??」


いずれにせよ、この男達を納得させられる答えをなまえは持ち合わせてない。それならばいっそ、人違いだと突っ跳ねてしまったらどうか。


「その本、ゴーストライターに書いてもらったんです。だから、人違い。ね?」


なまえはそれ以上説明するのは面倒だと言わんばかりに手をひらひらと泳がせた。


「……それは本当か?」

「本当ですよ。だからもういいですよね?」


と、なまえはどさくさに紛れて立ち上がり、まるで何事も無かったかの様に山小屋を去ろうと足を踏み出したが、もちろん事態はそう簡単にはいかなかった。


ガタンと大きな音を立てて立ち上がった大男は、その屈強な腕でなまえの衿元を掴むと、ドアから一番遠い壁へとなまえを投げ付ける。


幸い手加減というものを知っていたのか、その時は肩を打っただけで済んだが、殺気を含んだ空気がなまえを取り巻いていた。



「あ、あの……」



なまえは初めて向けられた殺意という恐怖に身動きが取れなくなってしまったが、視線だけは目の前の大男のクナイに釘付けになる。


「人違いでも何でも俺達は終わりだ」

「はたけカカシが来る前に片付けて帰るぞ」


その言葉を最後に、余りの恐怖からかなまえの周りからは音が消え、大男がクナイを振り上げた瞬間になまえはぎゅっと目を瞑った……。




──カカシ……。

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