それから、サッカーの実力を見せた雷電はどうも円堂くんに気に入られてしまったようだった。修也も雷電のことを日本でもトップレベルの実力があるって言ってたし、本当に雷電って凄いのかもしれない。
「光。弟たちを家に帰らしてくれるか」
「…え、雷電は?」
「俺は雷門サッカー部にちょっくら付き合ってくる」
「ん、了解しました」
「あと…あいつのことも。頼んだぞ」
まだ遊びたいとごねるチビを連れて私は雷電の家へと帰る。何やかんや結構な時間動き回って、あとはよく泣いたからか。家について、おやつでも食べさせようとお菓子を持っていくとチビたち5人は仲良く昼寝していた。
しかし、そこでようやく気が付いたのだ。
「あれ。……修也がいない!?」
☆ ☆ ☆
今日はよく溜息を吐く日だなと思えば、よく走る日だなとも思った。体力的には後者はキツいのだけど。家を飛び出て、周辺をくまなく探すがなかなか修也の姿は見当たらなかった。
「嘘でしょ、まさか…」
汗が全身からぶわりと湧き出る傍ら、額からはツウと冷や汗も流れた。
最悪の事態が頭の中に過ぎる。
宇宙人の奴らに、見つかった…?
居ても立っても居られなくて、また私は走り出す。先ほどまでいた広場に向かった。誰も見当たらない。雷電や雷門イレブンの姿もなかった。
よく私と修也が喋っていた海辺に来ても、そこには誰もいなかった。本当に、本当に奴らに連れて行かれてしまったのか。もしそうなら…どうしよう、どうすればいい。こんな呆気なくも修也を守れなかったのか。
やっぱりチビたちの頼みも、修也のチビたちへの優しさも断って。修也の側にいなくてはならなかったのだ。少しなら大丈夫だろうと油断していたから、こんなことになってしまったのだ。
悔しさと、やるせなさと。でも、まだ連れ去られた訳ではないという微かな希望を力にまた私は修也を探し回る。
「…そうだ、」
修也と雷電がよくサッカーの特訓をしていたグラウンドへ向かおう。この森から横断すれば、最短距離でグラウンドに辿り着く。
森の中を必死に走った。グラウンドひとつを目指して、ただ走った。
お願いだから、無事でいて。
「――修也っ、」
ぎゅっと目を瞑って彼の顔を頭に浮かべたそのときだった。何者かに手首を掴まれ、勢いのついていた体を止められた。嫌な予感が頭にまた過ぎった。まさか、宇宙人の奴らじゃ。
「光…?」
「っ!?」
「そんなに走り回って、なにかあったのか」
恐る恐る振り返っては、そこにいた人物の顔と声を確認して私は思わず足の力が抜けた。いや足だけではない、恐らく体すべての力も抜けてしまった。だから私はそのまま、へなへなとその場に座り込んだ。安堵の息を、大きく吐きながら。
「なにかあったのかって、こっちの台詞だから!ばか!あぁ、もう、本当に良かった…」
「…?」
「家に帰ったら修也、いないから。それで探しても探しても、どこにもいないし。宇宙人に連れ去られたかと思ったじゃんか…」
ついつい修也を責めるような言い方になってしまったことに申し訳なさを感じるも、修也には私の思いが伝わったのか眉尻を下げて私に視線を合わすかのようにしゃがんだ。
「…すまない、勝手な行動をして」
「ほんとだよ」
「でも、ありがとう」
「えっ」
「俺のために、そこまで探してくれて」
そう言っては、修也は私を立ち上がらせてくれた。意外と体に力は戻っていて、何なく立ち上がれた。――俺のために、なんて。当たり前じゃない。私が……どれだけ修也のことが大事で、好きなのか。
「それにしても、どうしてこんなところに?」
「……」
すると、修也は私から視線を移動させた。その視線についていくと、そこは私が目指していたグラウンドだった。そしてそのグラウンドにいたのは。
「雷門イレブン…?」
雷門イレブン全員の姿に、恐らくその監督さんやマネージャーさん達ら関係者。その横には雷電もちゃっかりといる。
「炎のストライカーの実力、見せてやんよ!」
そして雷門イレブンに対になるようにしてグラウンドに立っていた、一人の男の子がそう一向に叫んだ。色々と疑問点が多いけれど、どうやら今からサッカーバトルでも始まるようだ。
・
・
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雷門イレブン11人VS炎のストライカーと名乗る男の子1人のサッカーバトルが目の前で始まった。男の子は驚異のジャンプ力で雷門イレブンを圧倒させた。あの子、本当に人間なんだろうか。
雷門のディフェンスも全てかわし、気が付けばゴール前へ。そして、アトミックフレアという強烈なシュート技を繰り出して 円堂くんからゴールを奪った。…その実力は、サッカー素人な私でも一目で分かるほどに凄まじいもので。もちろん、それは雷門イレブンも同じ評価だった。きっと隣にいる修也も。
だけど、あの子が炎のストライカーってどういうことだろう。修也がそう呼ばれているのは知っているけど、この辺りで他にそう呼ばれているのは聞いたことない。というか、顔も見たことないし。
男の子を仲間にしようとする雷門イレブンだけど、監督さんらしき人が彼に学校の名前を聞くと表情を豹変させた。そこからはもう、怒涛の展開だった。
その男の子は、エイリア学園だったのだ。それが発覚したのは理由は、どこからか現れた同じエイリア学園の一人がそう告げたからだった。宇宙人繋がりとしては仲間だろうに、二人は睨み合いながら黒いサッカーボールを蹴り合う。少し離れた私たちのところまでその衝撃は伝わってくるものだから、とてつもないパワーなんだってことは分かる。
気が付けば、宇宙人さんは閃光を解き放ったうちに二人とも消えていた。一体なにがどうなっているのか。というか。
「えっ、…え?沖縄にも宇宙人来ちゃったってこと?」
正直、正直。宇宙人がいるだなんて信じているようで信じていなかった。修也関係で宇宙人の騒動は身近に感じていても、どこか俄かに信じられない部分もあって。けれど、それは確信に変わった。本当に宇宙人はいるんだ。しかも凄い実力を持っている。あわわあわわと、一人慌てふためく私の横で修也はただひたすら雷門イレブンを眺めていた。
「炎のストライカーは奴じゃなかった。さあ、一から出直しだ!」
雷電に眼鏡…というかゴーグルを指摘されていた雷門イレブンの一人がチームにそう言葉を投げかけた。
「…帰るぞ」
「えっ、あ、うん」
修也はそう言うなり踵を返した。無断でどこか一人で出かけたのはこちらとしては頂けないが、少しでも仲間たちの姿を目にしたかったのだろう。それは仕方ないことだ。
――けれど。それが修也にとっては良いことなのか、それとも更に彼にもどかしさを与えることになったのかは、この私でさえ分かった。だからこそ、私から何を言っても無駄なんだとも悟って今はおとなしく彼の後をついていくことしか出来なかった。私はこの彼との見えない距離感が、もどかしかった。
//170128
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