周りを警戒しながら修也とチビ5人を引き連れて、少しでも急ぎ足で目的地である大海原中学校へと向かう。私たちが通っている学校の隣の中学とはいえ、歩いてまぁまぁの距離がある。のんびりちんたら向かっていると、試合開始に間に合わないかもしれないのだ。

「姉ちゃん、早いよぉ」
「おれ、もう疲れた」

 サッカーをしているときは馬鹿みたいに体力があるのに、やっぱり遊び以外だとチビはすぐにダウンしてしまった。とにかくチビ子は私が抱っこする。次に双子のチビたちをどうしようかと考えあぐねていると、修也が二人の手をそっと取った。

「こうすれば、まだ頑張れるか?」
「!――うんっ」
「お前たちはまだ走れるな」
「うん、大丈夫だよ!」
「さすがお兄ちゃんたちだ。いくぞ!」
 
 上のチビ二人にそう確認を取り、両手どちらにも双子のチビを引きながら、修也は足を急がせた。思わず苦笑いにも似たような笑みが漏れる。私は決して体力があるはずがない。いつもサッカーをすれば、すぐに疲れて木陰で休憩しているのだ。チビを抱えて走って体力ピンピンな訳がない。修也は完全に疲れ果てている私の方へ視線をよこした。

「――光、」

 頑張るんだ、お前も。余裕綽々といったそんな修也の表情に返すように、笑みを向けて大きく頷いた。そしてまた、ひたすら私たちは走り続けた。


☆ ☆ ☆




『みんな良く聞けー!雷門中対エイリア学園のサッカーの試合がもうすぐ始まるぜ!今すぐ大海原中のグラウンドへ集合だ!!見なきゃ損、損!!』

 大海原中学校まで後1キロほどの一本道を進むだけといったところで街に鳴り響いたそれは間違いなく、雷電の声だった。町内放送を利用して、雷門と宇宙人の試合の観客を増やそうとしているのだ。そしてその時に、そういうことだったんだと頭で閃く。修也が宇宙人の手下の目を少しでも免れ、試合を見られるようにするため雷電が考えていた作戦っていうのは、こうして観客を大いに集めれば、見つかる可能性は低くなるということなのだろう。
 修也の方をちらりと見ると、どうやら彼もそれを悟っていたようでお互いに頷いた。

 放送を聞いて、住宅街からはぞろぞろと人が出てきた。世間を騒がせている宇宙人――エイリア学園と、それに対抗している日本一の雷門中の試合が、こんな近所で行われるというのだ。一世一代の出来事だといわんばかりに、みんなが大海原中学校へと向かっている。

「満員御礼になりそうだね」
「ふっ、そうだな」

 小言を挟みながら私は休憩をしているのだけど、やっぱり修也は余裕の表情を浮かべていてさすがだと笑ってしまった。






 大海原中学校へ到着すると、そこには既にたくさんの観客で溢れかえっていた。思わず感嘆の声を漏らしてしまう。予想はしていたけど、まさかここまで集まるなんて。

「おーい、お前ら!」
「雷電!なんとか作戦成功したようだね」
「あぁ。光、お前も豪炎寺と弟たちを連れて来てくれてありがとな」

 雷電にそう言われて、ホッと安心した。私の任務はどうにか遂行できて良かったと心底思う。肩の力が一気に抜けた。まぁ、まだまだ油断はしていられないのだけど。

 そこでようやく私は、グラウンドに視線を向けた。つい先日見かけた雷門イレブンと対のように立つエイリア学園――。あれが宇宙人。なんだか目が赤い。こ、怖い。テレビで散々見て来たけど、生で見るとやっぱりオーラだとかが違う。本当に宇宙人なのかな。控えめに言って、えげつない。

 それから、ちょうど七人ほどの空いている観客席へと腰を下ろした。一人分スペースがなかったので、チビ子を私の膝の上に乗せた。相変わらずきゃっきゃと騒いでる。

「姉ちゃん、サッカーの試合はじまるのー?」
「そうだよ」
「わぁ、見るの久しぶりだぁ!」

 まぁ、私たちからすればのんきに楽しんで見ていられる試合ではないのだけれど――と内心で苦笑いしながら、もう一度グラウンドへ視線を移した。なんかの大会の公式戦でもあるまいし、何か挨拶をする訳でもなく選手たちは既に試合を始めるようとそれぞれのポジションについていた。

 雷門のフォワードは、どうやら女の子一人というワントップ体制だった。実況の男の子が叫んでいるのをこの大勢の観衆の中聞いていると、どうやら今ディフェンスにいる吹雪士郎という選手が現在のストライカーらしかった。
 その吹雪という選手の後ろには、当然のようにゴールキーパーの円堂くんがいた。あの日、私が帰宅途中に彼とぶつかった日は、あまりにも突然の出来事で咄嗟に変な態度を取ったり、あまり関わるとボロが出てしまうと避けていたけど――こうやって見ると、やっぱりオーラがある人だなと思った。
 ジっと雷門の選手を一人一人眺めていると、修也の隣にいる雷電が真剣な面持ちを浮かべた。

「先に言っとくが、作戦はいつどのタイミングでスタートするか分からねぇ。でも試合中ってことは絶対だ。だから、常に気を張っててくれ」

 まあ、それでも連絡が来るまではこの試合をきっちりと見ていてやろうぜ。お前のためにも、あの雷門の選手のためにも。その雷電の言葉に修也は頷いた。そうだ、気は張っておかないといけない。試合にも集中したいけど、いつどこで宇宙人の手下らにバレるかも分からない。作戦が始まる前にそんな事態になったら全てはパーだ。常に周りに目を光らせておかないと。

「さあ、それでは試合が始まります!」

 実況が、ひときわ大きな声でそう叫んだ。隣を見れば、修也の視線はより一層険しくなった。

「修也」
「!……なんだ」
「ううん、何でもない」

 私がそう言うと、修也はどうしたんだと柔らかく微笑んだ。ほんの少しだけど彼の表情がほぐれたような気がして、良かったと安堵の息を漏らした。

 沖縄の快晴の空の下、運命の試合開始を告げるホイッスルが、高らかに鳴り響いた。

//180218


   


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