「エイリア学園は、大阪のなにわランドの地下に修練場を設けていたという事実が発覚し――」
朝。ニュースキャスターのお姉さんの原稿を読む声に集中していると、テレビ画面に映ったのは、そのエイリア学園と試合をしているチームだった。ユニフォームには雷門、と書かれていて思わず、あっ、と声が漏れた。
どうやら、この試合は昨日リアルタイムで全国放送されていたらしいのだ。どんだけ。いやでも、それくらい大ごとだもんね。イマイチ距離感が掴めない。
北海道の次は、確か京都に襲撃予告があって、その次は大阪に出くわしたのか。京都以来、襲撃予告や学校が破壊されたというニュースはないけれど。
「沖縄には来ない方がいいよ…暑いよ…宇宙人さんとろけちゃうよ……」
「何ぶつぶつ言ってんの」
「う」
「早くご飯食べて学校行く準備しなさい」
お母さんに一喝貰い、私は渋々と白米を口に運んだ。うん、美味しい。
☆ ☆ ☆
「まず、初めにジェミニストームってチームが現れたんだ。そいつらが、学校破壊しまくっていた奴らだ。けど、北海道の白恋中にて、雷門に負けた」
「へえ」
「ようやく宇宙人をやっつけた!と思ったら、次に現れたのはジェミニストームよりも強いイプシロンって奴らだ。そいつらが、京都に襲撃予告を出した」
「ふむ」
「京都の漫遊寺中で雷門は大敗した。それから、昨日の大阪のなにわランドだ。結果は引き分けだったけど、正直あいつらも焦っているだろう。現に襲撃予告も全然出ていないし、きっと今頃必死に練習してんじゃねーか?雷門を倒すため」
「ほお……詳しいね」
学校で今朝のニュースについて話していると、サッカー部でも何でもない男の子がどうやらこの件については詳しいようで、細かく説明してくれた。良くいるよね、世間のニュースにやたら詳しい人って。とても分かりやすい。
それにしても知れば知るほど、雷門って凄いよね。だって初めは宇宙人にコテンパンにされていたんでしょ。けれど、何度も立ち上がってレベルアップして、宇宙人たちに追いついては追い越している。
「でも、そうなると宇宙人たちはまだまだいるかもしれないってことだよね。そのー、イプシロンとかいう奴らの他にも」
「ああ!俺はその線が強いと思ってる」
もしそうなら、宇宙人が全員負けるときはだいぶこの先になるのではないか。今は襲撃予告なんか無くても、宇宙人がまだまだいるなら、沖縄に来るのも時間の問題じゃないのか。もし沖縄に宇宙人が来たら、どうなるんだろう。
――もし沖縄に雷門が来たら、豪炎寺はどうするんだろう。
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学校の帰り道、いつものように海沿いを歩いていると少し先に もう随分と見慣れた後ろ姿を見つけ、口元が緩むのを感じながら私はその後ろ姿目掛けて走った。
「豪炎寺!」
勢いよく名前を呼ぶと、彼が振り返った。私の姿を確認して、少し不思議そうな表情を浮かべる豪炎寺に、こちらも思わず頭にはてなマークを浮かべた。
「どしたの?」
「いや…制服姿。新鮮だったから」
「ああ、そういや見るの初めてだったね」
白のシャツに、青いサマーベスト。ダークグレーのプリーツスカートといったウチの制服は、この辺りの中学じゃあ1番可愛いと評判が高い。個人としていえば、隣の大海原中みたいなセーラー服がちょっとだけ憧れるけど。
「雷電も学校行ってるし、暇だった?」
「弟たちの相手をしていたよ」
「あ、そっか。今チビたちは?」
「昼寝中だ」
「またサッカーやって疲れたの?」
「いや、今日は鬼ごっこと隠れんぼだ」
「あはは!」
豪炎寺が鬼ごっこや隠れんぼしている姿を想像したら笑える。もちろん鬼をやらされたらしいけど。もういいかい、って言う豪炎寺なんか想像するだけでやばいでしょ。何のギャップだ。
「チビたちの世話ありがとね、ほんと」
「いや。むしろ、こっちが有難い」
「いつもは近所のおばさんに預かって貰っててるんだけど、あの子たち寂しい想いしてるだろうから。豪炎寺が遊んでくれるからきっと喜んでるよ」
「……そうか」
豪炎寺は、海を眺めながら嬉しそうに微笑んだ。その横顔に、私もつられて口角が上がる。
「あいつらといると、気が晴れるんだ」
「……うん」
「何も考えずにいられる」
「そっか。良かったね」
チビたちの存在が、豪炎寺を救っているという事実に嬉しく思いながらも、少しだけ。
羨ましいなって。
「私も……」
そんな存在になれてるかな。
海風が強く吹いたタイミングと同時に発したその言葉は、うまく波音にかき消された気がした。無意識に口から溢れたその言葉に気が付いたとき、思わずぼんやりとしていた頭がはっきりと覚醒した。あれ、私は何を言ってるんだろう。馬鹿らしくなって、首を横に振った。
「――……私も。チビたちはそんな存在だよ。何も考えずに楽しんで笑ってられる。私も豪炎寺と一緒だよ」
満面の笑みを向けると、豪炎寺は目を見開いてから笑みを浮かべた。再び風が強くなって髪が靡いた。思わず海に視線を送るとザアア、と波音が大きくなった。そのとき、隣から「なれてるぞ」という声が聞こえたような、そんな気がした。
//170521
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