御幸の先輩たち



 今日も今日とて食堂にて御幸と他愛もない会話(今日も古典の先生はうるさかったとか古典の先生の頭はハゲていたとか)をしながらお昼ご飯を食べていたら、それは突然やってきた。

「オラァ!御幸ィ!」

 ビクっっ、と御幸と一緒に私も反応する。恐る恐る振り返ると、なんか超怖そうなヒゲはやした人とピンク髪のニコニコした人と、こちらをジッと眺めている寡黙そうな人がいた。

「あ、ど、どーも、みなさん…」
「なんだァ御幸、まさかこいつが噂の…お前の女か?」

 ジロリと私の方を睨んできて、また身震い。お、女。言い方。

「はっは、そーですよ。可愛いですか?」
「あぁ!? てめ…」
「純、うるさい」
「いっでェ!」

 ヒゲさんが御幸に食いかかろうとしたら、ピンクニコニコさんがヒゲさんの頭にチョップをかました。しかも、痛烈そうな。見かけによらずこの人怖いな、なんて思ってたら「今失礼なこと思ってたでしょ」とニッコォリ笑いながら私にそう言ってきた。背筋がひやりとした。

「すまないな、御幸。せっかくの二人の時間を邪魔して」
「いやいや、全然大丈夫っすよ」
「俺たちは野球部の三年だ」
「あ、御幸の先輩さんたちだったんですね」

 御幸がいつもお世話になってます、とついうっかり言いかけたけどすぐに止める。何言おうとしてんだ自分。なんか主人がいつもお世話になってますみたいな感じの勢いで言ってしまいそうだった…!

「この人、キャプテンなんだぜ」
「ええぇ! そうなんですか!」
「あぁ」
「こんな奴が後輩の時点ですごく大変なのがお察しできるんですけど…頑張ってください!」
「おい」
「あはは、御幸の彼女なかなか言うじゃん」

 するとキャプテンさんが「ありがとう」と、ずっと固くしていた口元を緩めて微笑んだ。え、ちょ、待って、

「おい哲、亮介、いくぞ」
「いこっか」
「それじゃあな、御幸」
「あ、はい、また部活で」
「さ、さよなら…」

 過ぎ去ってゆく三つの背中。

「ちょ、御幸」
「ん?」
「やばい」
「何が」
「キャプテンさん」
「…?」
「超かっこいい、惚れそう、てか惚れた」
「おまえな…」
「私これからキャプテンさんのファンになる」
「俺のファンじゃねーの?」
「御幸は彼氏だもん」
「わ、なんかキュンってきた」
「無理待って本気で惚れそう…えっかっこよすぎない? あの寡黙そうな感じでキャプテンとかギャップたまらなさすぎない? あれで野球してる姿とか見たら私もう惚れるとかいうレベルじゃなくなっちゃいそうどうしよう御幸助けて」
「え、俺彼氏なんだよな?」

160810

   

BACK