さらけ出す
夏の甲子園の予選、決勝。
青道高校は稲城実業に負けた。
その日の夜。
お風呂に入って、髪の毛乾かして、布団にゴロンして、携帯を確認したらメールの来ていた。御幸からだった。
応援来てくれてありがとな。試合の後も話せなくてごめん。甲子園でも応援させてやりたかった。急で悪いけど、お前の声聞きたい。
すぐに私は奴に電話をかけた。もう、メールのその最後の文を見てから十秒も経っていないくらい早かったと思う。五、六コールかかったくらいで「…もしもし」という奴の声が、電話の奥から聴こえた。
「…私の声が聞きたいっていうからかけてあげた」
「…はっは、あんがと」
なんで私、こんな可愛げないんだろう。言いたいことなんて、言わなきゃいけないことなんて、もっとたくさんあるのに。
「はぁー負けたわ」
重い息を吐いて、御幸はそう言った。その事実は、もうどんなに足掻いても変えることはできない。御幸は今、どんな顔をしているんだろう。
「あんな頼もしい先輩たちがいても、甲子園に届かなかった」
「…」
「…俺たちの代で甲子園なんて、また夢の夢だってことだ」
「…」
「でも、まぁやるしかねーよな。前向くしか」
「御幸」
「…ん」
「もういい」
「え?」
「もう…いいから」
「いいって、何、が」
「私には、強がらなくていいから」
そういうと、御幸はごくりと唾を飲み込んだ。そして、「…お前にだから強がってんだよ」と、らしくもない返事がきた。
「正直、もう先輩と野球できねーとか信じらんねぇよ」
「うん」
「負けたことも、認めたくない」
「うん」
「最後、初球インコースじゃなくてアウトコースに見せ球を送ってたら、いち早く稲実バッテリーの思惑に気付いていたら、」
「うん」
「…あとひとつで甲子園まで追い詰めた? 実力は稲実とほぼ同じ? んなの結局は結果が全てなんだよ。何が惜しかっただ、何も惜しくねーってんだよこの馬鹿野郎が!」
「…」
「……あー、スッキリした」
「ずっとたまっていた大便が出たくらいに?」
「ははっ、なんだよその例え。きたねーな」
「そうでしょ?」
「…ま、そうだな」
「ふふ」
「…ありがとな、みずき」
「…何が?」
「はーあ。くっそ。やっぱお前には敵わねーわ」
「でしょうね」
「お前なぁ…」
「まぁ、愚痴りたいときとか癒されたいときとかはいつでも私に頼れば?」
「はっはっは! 癒されたいときねぇ」
「なんだよ」
「べっつに?」
「……御幸」
「ん」
「頑張って」
「……あぁ、頑張る」
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160812
あの敗戦後、すぐに切り替えていた御幸が本当は彼女に自分をさらけ出していたらいいなっていう話