可愛くなる
私は二学期が嫌いだ。ひたすらぐーたらしていた夏休みの後だから、やる気がいかんせん出てこないのも当然だ。でもそんな私でも、ちょっとだけ二学期が楽しみになったのは奴の顔がこれからは毎日見れるからだと思う。
「はよ、みずき」
「おや御幸さんご無沙汰です」
「なんだよそれ」
机でぐでーっと寝てたら、頭をつんつんと叩かれて起きあがったら御幸がいた。御幸を見るのは、あの夏大の日以来だ。直接喋ったのは、終業式以来?
キャプテンになってチームをまとめているからか、御幸は凛々しくなったような、でもなんとなく疲れているような、そんな感じがした。ちょっと、痩せた? まぁ、いつも電話やらメールでやら苦悩を聞かされているけれども。それにしても、久しぶりに顔合わせるからちょっぴり緊張するな。
「あれ? お前なんか」
「ん?」
「化粧してる?」
そういわれて、あぁと納得する。この夏休み、メイクも研究してたし夏休み前よりかはなんだか印象違うかもしれない。「夏休み入る前からしてるけど」「マジで」「今時すっぴんの子なんていないよ、みんなナチュラルメイクってのをしてるんだから」「へえー」そっちから聞いてきたくせに、なんか興味のなさそうな返事だな。
「やっぱ化粧って可愛くなるんだな」
「可愛く見える?」
「おー。超可愛い」
御幸は、思ったことをストレートに言う性格だ。こうやって、嬉しいことも。言っちゃいけないこともズバズバ言うからたまに反感を買うんだけどさ。まぁメイクっていうのは女が可愛くなりたいからするわけで、素直にそう言ってもらえると嬉しいの何の。特に御幸が言ってくれるともう幸せの何の。絶対こやつにそんなこと教えてやんないけど。
「ほっぺオレンジ」
「チークね」
「ふうーん」
「ちょっ、触んな」
「すげ、キラキラしてんじゃん」
私のほっぺを撫でて、指の腹を興味深そうに御幸は見つめた。指の腹にはチークが付着して、キラキラ光っていた。
「後どこしてんの?」
「眉毛、口、目」
「へえ〜」
「ジロジロ見んな、近い」
「女子は大変だな」
「まぁ、楽しいけどね」
「ふーん」
すると御幸が「鏡貸して」と突然言ってきて、とりあえず手渡すと自分の指の腹についていたチークを、そのままほっぺにつけていた。微かに御幸のほっぺにのったオレンジのチーク。それを御幸が鏡で確認した。
「俺は似合わねーな」
こいつアホか。
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160811