止められない
青道高校は秋大を順調に勝ち進んで行っていた。準決勝は修学旅行に行っていたから結果しか分からないけど、六対五で勝ったらしい。しかも延長でサヨナラ勝ち。しかもしかも何と何と御幸がさよならホームランを放ったらしい。やばい、なにそれ、超見たかった。超格好よかったんだろうな。それに何より勝って良かった。安心した。
「ただいまー御幸ーっ!」
「はいはいおかえりー」
「御幸にお土産いっぱい買ってきたよ。はいこれ、たこ焼き味のせんべいでしょ、お好み焼き味のクッキーでしょ、でこれが! 私とおそろっちの、たこ焼きくんのキーホルダー!」
「うん普通なものがねえな」
「何か言った?」
「いや、何でもないっす」
「彼女のプレゼントは素直に喜んどけバカ!」
べしり、いつものように御幸の肩を叩いた。そしたら、「いっ…」て、本気で痛がっていた。
「え? ごめん今のそんな痛かった?」
「お前の力はいつも馬鹿力だっつの…」
「ねえ、今そんなのいいから。御幸、痛いの?」
もう一度べしり、と同じくらいの強さで叩くとやっぱり御幸は顔を歪ませた。待って、これ、本気で痛いやつだ。
「ねえ御幸…まさか怪我して、んぐッ」
私だって認めたくもないし気付きたくもなかったそれを確認しようと問いかけたら、最後まで言う前に御幸に手で口抑えられた。目が黙れと言っている。マジの目だ。怖い。
「ぜってー誰にも言うなよ、特に野球部」
「うそ、野球部にも言ってないの…?」
「あぁ」
「いつ? いつから怪我したの?」
「準決勝。でっかい相手が危険プレーさながらのタックルしてきてな、この通り」
「この通りじゃないって…決勝、どうするの?」
「出るに決まってんだろ」
「こっ、この身体で? 私のか弱い衝撃でも痛がってるんだよ!?」
「何だよそれ」
ヒソヒソヒソ、となるべく周りに聞こえないように会話するけど、私の頭はもうてんやわんやだった。なんで、御幸。めっちゃ痛そうじゃんか、なのに。キャプテンだから? レギュラーだから? 大事なキャッチャーだから? 次の試合で甲子園決めれるかもしれないから? 身体を痛めてまで、試合に出ようとしてるの?
「お前がそんな顔すんなって」
「嫌だ、だって…そんな、絶対御幸辛いじゃん」
「大丈夫だって、な?」
そういって頭を優しく撫でられる。…なんで私が慰めらてんの。
「…無理しないでね、って言っても無駄だよね」
「まぁ…そうだな」
「本気で、試合に出るの?」
「あぁ」
御幸の目には決意がこもっていた。それを見て、こやつは絶対に止められないと思った。ならば、私は。
「それじゃ、優勝するまで何が何でも頑張ってよ、キャプテン御幸」
「…おう」
「誰にも言わないから」
「…ありがとな」
「んもう! 決勝、違う意味でヒヤヒヤしながら見なくちゃいけないじゃん」
「はっはっは、そうだな」
「…」
「…でも、まぁ本当はさ。誰か一人にでもこのこと教えたら気が楽なんだけどなーって思ってた矢先だったから良かった」
「御幸…」
「それもお前でよかったなって、」
「無理、泣ける、やめて」
「ははっ」
「御幸ぃい゙い゙…がんばっでね…ほんどに…」
「おいおいマジで泣くのは辞めろよここ教室
!」
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160818
付き合い当初よりだんだんと弱みを見せていく御幸くん