おめでとう



 ワァァア、と割れんばかりの大きな歓声が地鳴りのように球場へ響いた。さっきまで、負けていたのに。野球って、すごいなあ。面白いなあ。友達が隣できゃあきゃあ騒いでいるけれど、私は一人でぼーっと眺めていた。

 青道高校野球部が、秋季東京都大会を優勝したまさにこの瞬間を。


「みずきちゃん、やったね!よかったね!」
「…うん」


 本当に、良かった。野球部が優勝した喜びも凄くある。だってこれで甲子園もほぼほぼ決定するらしいから。でもね、それ以上に私は安堵の方が勝っていた。御幸がゆっくりと立ち上がって、整列する。その瞬間、倉持や他のチームメイトに支えられていた。…あの野郎、本当に何なの。怪我の痛みもこらえて、最後まで試合に出続けて。マジで何なの。

「カッコよすぎじゃん!」

 つい倉持みたいに、ヒャハ!と笑いそうになった。





「…もしもし」
「おー、まだ起きてたか」
「まだ十時だよ、寝てるわけないじゃん」
「いや、お前だったらぐーすか寝てそうじゃん?」
「殴るよ」
「はっはっは!」

 十時過ぎ、御幸から電話がかかってきた。今日という日も私たちの会話は相変わらずのもので、思わず御幸につられて私も笑った。

「どうだったの?」
「え?」
「病院。大会終わってすぐに行ったんでしょ」
「あー、脇腹の肉離れだってよ。全治三週間」
「…そっか」
「こんなの十日もありゃ治ると思うけどな」
「とかいってまた無茶すんの? 辞めてね、私の心臓が持たないから」
「あっれーそんな心配してくれてたの?」
「お前マジで明日殴るから、二発」
「ははっ、ごめんって。それは勘弁」
「分かってるし、そんなの」
「そ?」
「…うん、分かってる」
「ん?」
「でも…本当に良かった」
「…」
「御幸が、最後まで試合に出れて」
「…」
「御幸が、望んでいたことでしょ? だから、きっと凄い痛みに耐えて戦ってたんだろうけど、試合中に倒れこんだり、そういう大事にはならなくて本当に安心した」
「…」
「…」
「はぁ」
「え」
「ほんっとさ、お前って奴はさあ」
「…」
「彼女じゃなくて嫁みてーだな」
「は!?」
「みずき」
「は、はい」
「キャプテンで悩んでるときも、怪我のときも、どんなときも支えてくれてありがとな」
「…」
「マジでお前がいてくれてよかった」
「…うん」
「…ほんと、好きだよ」
「うん…私も」
「…ああー、」
「ん?」
「今すぐお前に会ってちゅーしてえわ」
「明日してあげるね」
「お、マジか!」
「二発殴ってからね」
「はっはっは、それはいらねー」
「…御幸!」
「ん?」
「優勝、おめでとう!」
「…あぁ!」

160819

   

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