初めてのデート
来た。ついにこの日が来た来た来た来たのである! おじいちゃんやおばあちゃんからお年玉が貰えるこのお正月より、めちゃくちゃ豪華な料理が食べれるこのお正月より、その翌日を私は楽しみにここ最近を生きてきたのだ!
今日は待ちに待った御幸とデートの日!
しかもただのデートじゃない。付き合い始めて早七ヶ月ほど! 初めてのデートだ! お陰でウキウキワクワクし過ぎてお母さんに引かれた。なんで? 好きな人と初めてのデートだよ? 女なのにどうして共感してくれないの?とか思ってしまうほど、どうやら今日の私はかなり乙女なようだ。ちょっとやばいかもしれない。
家にいても落ち着かなくて、予定していた時刻より三十分ほど早く待ち合わせ場所に来てしまった。楽しみなんだけど、なんかそれ以上に緊張するから仕方ないんだよ。…って、少女漫画かーい。とりあえず、駅前の人だかりなんて気にせず、鏡を取り出しメイクと前髪チェック。よし、可愛い、はず。
それにしてもやっぱり、三が日の真ん中である今日は初詣に行く人もいっぱいでいつも多い駅前が更に人口を増していた。まぁ、私たちも例中で今日は初詣にも行くけど。こんなんで御幸と落ち合えるかな、なんて思ったそのときだった。
「よっ」
「うわっ」
頭に手を置かれ驚いていると、そこには御幸がいた。え、なんで?
「待って、来るの早くない?」
「いやお前も早ぇじゃん」
「え、あ、まぁ…」
「良くあるだろ、待ち合わせに早く来てソワソワするみたいなの。それを期待して来たらほんとにお前早く来てた」
「それはそれは」
「はっはっはっ! あれか? 家にいても落ち着かなかった?」
「だまれ」
「やー可愛いなぁ」
「だまれ」
…あ、意外といつも通りの会話ができてる。と思って御幸の頭から爪先までの姿を眺めるとまた緊張し出した。だって御幸の私服姿見るの初めてだもん。新鮮過ぎるもん。くっそ、格好いい。格好よすぎる。野球で鍛えてる分、他の人よりゴツいはずなのに。なるほど着痩せするタイプなんですね、顔も良いしお前どこのモデルだよ。はあ。
「よし、行くか」
「あーい」
すると御幸が、私の腕と自分の腕を組ませて手はきっちりと恋人繋ぎをしてきた。そのナチュラルさにちょっとびっくりして御幸の顔を伺うと、楽しそうに口元を緩めていた。なんかご機嫌だな御幸。私と同じで、楽しみにしてくれてるのかな…とか考えてたら恥ずかしくなって目を反らした代わりに、繋いだ手に力を込めた。
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「うわ、人えげつな!」
「だなー」
お目当ての神社に辿り着くと、そこはとにかく人でごった返していた。その光景についつい目を奪われていると、繋がっている手とは逆の手で御幸に頭をこつかれた。我に帰る。
「私、初詣あんまり来たことないからさ」
「そーなの?」
「うちは家でぼーっとしてるだけだからねー。昔は旅行とか行ったりしてたけど」
「へえー」
すると御幸は手を握り直して、「離れんなよー」と適当な忠告をしては人混みの中にズケズケと紛れ込んでいく。とりあえず、されるがままの私は人に埋もれぬようにぶつからぬように歩くのに必死で、気付いたときには目の前に階段があり、それを上れば御賽銭箱が目に入った。
「十円でいいのかな?これ」
「いや、十円は良くないらしいぜ」
「なんで?」
「遠縁つって、縁から遠ざかるって聞いた。五円玉二枚で十円は良いらしいけど」
「へえー豆知識! そんなの良く知ってるね」
「まーな」
まあそんなこと聞いてしまったら、御幸の言う通りにする他ない。私は御賽銭箱に五円玉を二枚放った。隣では御幸も私と同じように五円玉を二枚放っていた。
パンパン、手を叩いて合掌し頭をさげる。
(…今年も安全で暮らせますように、進路関係でもがき苦しみませんように、もう少し可愛くなれますように、これからも御幸と楽しく過ごせますように…)
そう心でお祈りして、一区切りついてちらりと隣を見ると御幸は真剣にジッと何かお願い事していた。きっと、今も野球のことで頭いっぱいなんだろう。野球に関してはとことん貪欲なこいつのことだ、そうに違いない。そんな御幸を見て口角を上げながら、私は再び前を向いて頭を下げた。
(もう……怪我しませんように)
―――それと。
(御幸が満足いく高校野球最後の年になりますように)
心がぽかぽかしたその瞬間、頭にコツンと衝撃が響いた。
「いでっ」
「お前頼み事多すぎだぞ〜、何頼んでたんだ?」
「…さあ? 御幸には秘密」
「…え?俺とちゅーしたい?」
「お前の耳どうなってんの?」
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160907