初対面
御幸からお母さんのお話を聞いたあの後、抱きしめ合ってた私らはお互いそのままどちらからともなく眠りに落ちた。うん、びっくりだよね。何もなかった。セくスのムードにもならなければ、する?っていう話にもならなかった。はははははは。
そんなこんなで翌日、御幸と一緒に私の家へとやってきた。今日は御幸と私の両親の初対面、はじめての挨拶だ。ちなみに当の御幸さんは眼鏡を曇らせ、眉尻を下げていて溜息をついている。イケメン要素どこ行った。髪の毛くらいだ。寝癖がちとついてるけど。
「やっべー…マジで緊張する」
「お父さんもお母さんも御幸と会うの楽しみにしてたから大丈夫だって」
まぁどちらかというと私の彼氏としてというより、高校野球界の有望な選手(イケメン)だからという理由がおおよそを占めてるんだろうけど。
てなわけで、未だに足を動かせない御幸を強引に引っ張り連れ、いざ!
「ただいまー」
「みずき、おかえりなさ…」
「あ、お母さん、紹介するね。まあ知ってると思うけどこいつは私の彼氏サマの御幸だよ」
「初めまして、御幸一也です」
「しゃ…う…わ…」
「え?」
「写真と違うわ! 雑誌と違うわ! なんだか違うわ! イケメンだけども! 実物の方がイケメン過ぎるけれども! 」
「あー…眼鏡だからじゃないの? 野球してるときはスポサンらしいし」
「それね! きっとそれね! やだもう、御幸くん初めまして! みずきの母ですぅ〜みずきに似合わずとってもイケメンね! みずきから色々と聞いてるわ。この子のせいで野球に支障とかない?」
「い、いえ、全くないですよ」
「そう! 良かった。ふふふ、それにしても本当にかっこいいわね。おばさん照れちゃう!」
「…お母さん…」
「まあ、玄関で話すのもなんなんだから! リビングへきてちょうだい! お父さんもウキウキして待ってるわ」
やばいお母さんテンション上がりすぎ。ついさっきまで緊張していた御幸もさすがに苦笑いである。
「お父さん! 御幸くん来たわよ!」
「お邪魔しま…」
「んおおおおおお! マジだ! マジで御幸一也だ! あああ会いたかったぞ御幸くん!みずきの父ちゃんだ! まあまあ座れ! とりあえずそこ座れ!」
「え、あ、はい?」
「いやー、あらかじめ聞くけどみずきのマジで彼氏なのか? マジなのか?」
「はい、付き合わせてもらってます」
「そうかそうか。娘がいつも世話になってんな」
「いやいや、こちらこそ」
「なあ、サインあるか? サインもらっていいか?」
「はっはっは! サインはさすがにまだないですよ」
「お父さん気が早いわよねぇ、もう」
「そりゃ残念だ。お、秋大優勝おめでてぇな! センバツもほぼ確定だろうし、甲子園派手に暴れまわってこいよ!」
「はい!」
気付けばこたつの中にお父さんと御幸とお母さん三人で座って仲睦まじく話していた。あれ、なんだろう。あれ、この人たち。
「大事な娘のこと忘れてね?」
絞り出した私のその言葉にお母さんがようやく「あ、」とまだ突っ立っている私を見て「あんたも早くこっち来なさいよ〜」と言っては御幸に視線を戻した。え、お父さん? お父さんは? 未だに御幸から私の方に視線をよこしてませんけど? おかえりの一言くらいどうですか? やることやってませんけど私一応その男の家に泊まったんですけど?
なんて思っているけれど、仲睦まじい3人を見てると私の口角はふっと上がった。
「ま、」
家族が、自分の彼氏と仲良くしてくれるほど嬉しいものはないね。すると、ようやく私に気付いたお父さんが「お前いたのか。ってか何ニヤニヤしてんだ。気持ちわりぃな」と引いた目で見てきたため、「やっと気付いてくれたんだね」と飛びっきりの可愛い笑顔を贈ってあげた。隣にいる御幸がぎょっとしてた。
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161002
「いやー、やっぱお前のお父さんもお母さんも面白すぎだわ」「大事な娘が帰ってきてもしばらく気付かないくらいだからね」「はっはっはっ! 根に持ってるな」「あ?」「怖い怖い」