バッティングセンター


 私のお家にやって来ていた御幸と、昼までずっとゴロゴロしてそれから昼ごはんをご馳走した。お母さんが全部作ったから別に私は何もご馳走してないけど。
 そして、昼から暇だなってことで私の家から徒歩二分のところにあるバッティングセンターに行こう!と私が素晴らしい提案をした。これで昼は楽しく過ごせそうだ!なんて思っていたけれど、既に家を出ているのに一つ心配が私の頭を過ぎった。

「オフまで野球すんのイヤだった?」
「ん? 全然そんなこたねーけど」
「…ほんと?」
「あさってから練習再開するしそろそろ体動かさなくちゃいけねーし」
「あ、やっぱり! ね、グッドタイミングでしょ!」

 さっすが私じゃーん!なんて言ってると、あっという間にバッティングセンターに到着した。へえ、バッティングセンターって中はこんな感じなんだ…初めて入るかも。

「ほら早く、御幸カッキーンしてきてよ!」

 皆様、レッツイマジン! 彼氏と彼女がバッティングセンターでデートでございます。しかも、彼氏様は強豪校の野球部でございます。ここは定番のシチュエーションでいくと、「彼氏がカキーン!とホームランの的に当てて景品ゲットしてそれを彼女にプレゼント」なんですよね! ええ!
 しかしなんということでしょう、相も変わらず御幸は期待を裏切りません。

「っし、次はセンター方向にはじき返して…」
「くそっ今のはピーゴロ」
「次はレフト前に流打ち…っと!」

 彼女なんてそっちのけで、バッティングセンターにてマジで取り組んでます。目がマジです。ええ、そんなもんです御幸は。なにピーゴロって。なに流打ちって。
 ボールがビュンッと音を立て迫ってきたかと思えば、カキーンと綺麗にそれを打ち返す。確かこれ140キロって言ってたよね。140キロ…高速道路を車で走ってるときも、だいたい速くても100キロ超えるくらいでしょ、それよりも速い…ってやばすぎ。それを器用に色々なところに打ってる。強豪校で一年からのレギュラーだと、こんなことも出来るのか。それとも倉持とかも、みんな出来るのかな?

「御幸にとって、これくらいチョロいもんなの?」
「…まあ、バッセンのボールは死んでるからなー。コースも球種も分かるし、全部芯に当てる勢いでいきてえし、っうら!」
「…ほーん」

 ボールが死んでる…? 私の頭の中では野球ボールのキャラクターが、パタリと倒れて死んだイメージが浮かぶ。…いやなんだそれ。理解不能なり。

「てか、お前はやらねーの? せっかく来てんだし」
「え、あ、やっぱその流れにきちゃいます?」
「あ、まさか苦手だからしてなかったりー?」
「…」
「みずきちゃん見かけによらず運動神経悪ぃもんな〜はっはっは!」
「…」

 言ったな?貴様言ったな?おぬし言ったな?

「私をなめんなよ…うりゃあ!」

 ブンッ。無情にもバットは空を切った。ボールがガコンっと後ろのフェンスにあたっては跳ね返る。何度振ってもバットにボールが当たらない。あっという間に一回分の二十球を終えてしまった。……。

「まあ予想してる通りだな」
「どういうこと? 一球も当たらなかったんだけど!」
「ビビって球から逃げずに振ってるだけマシだと思うぞ?」
「ふんっ。御幸一体何キロに設定したの? どうせ150キロとかでしょ? ったく」
「…いやみずきさん、それはちじゅ、」
「まあいいや! 御幸も早く二回目しなよ! 次は御幸も150キロね! 私ももう一回しよっと!」

 結局そのあと、三回はやり続けた。御幸みたいな華麗なバッティングフォームを真似たけど、結局バットに当たったの四球だけだった。ちなみに、相変わらず御幸は丁寧にボールを色んな方向に飛ばしてた。最後の五球はホームラン狙って、と言ったらパッカラパーン、最後の一球を本当に当てやがった。びっくらポン。景品はなんとアイスのホームランバー1本だった。びっくらポン。御幸がやるよ、って景品を私にくれた。珍しく定番のシチュエーション通りでびっくりしたのは、ここだけの話。


1601107

   

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