「おつぴこぉ☆!カズナリミヨシただいま帰宅ぅ!」

「はぁ…うっざいの帰ってきた…。」

「おかえりカズくん。」

談話室にいた幸と椋に出迎えられたのは
一成だった。

「あっれぇ?みんなは?」

「監督は他劇団の手伝いだって。」

「シトロン様と三角さんはまだ帰ってきてないですし…。」

「おけおけ!じゃあ高校生組も?」

「ううん、心が夕飯の買い出しに行ってる。今日は脱カレー日にしようって。ちょうどカレー星人もいないし。」

「へぇー……。オレ迎え行ってくるー!」

「気をつけてね、カズくん。」

「うぃうぃー!」

急いで靴を履いて
スーパーの方に向かうと
男数人に囲まれている心を見つけた。

「ねぇ、いいじゃん少しくらい……。」

「俺たちと遊ぼって!」

「あのー…今から、お夕飯の準備あるんで……。」

一度私服に着替えて買い物に出ている心は
高校生だとは思われていないようだった。

「へー!?今から?偉いじゃん。俺らも一緒に行っていい?」

「一人暮らし?」

「あのー…困ります…!」

「彼氏いんの?」

「いやそのぉー……。」

「……心!いたいた!遅いから迎えにきちゃったじゃん……。」

「え!?」

いつものチャラさを少し抑えた一成が
男たちをかき分けて、心まで歩いてきた。

「テメェ…誰だよ!!!!」

「ははっ、心と遊んでくれたみたいでありがとう。……俺の…返してもらうよ。」

「え、ちょ…!一成さん!?」

買い物袋をスマートに手から取ると持ち直し、心の肩を抱きながら
一成は歩き出した。

「………はぁー…!おつぴこちゃん!怖かったのに頑張って耐えて偉かったね!どう?さっきのストリートACTっぽかった!?」

「へ!?」

「ははっ、がっつりナンパにあってて困ってそうだったからさ!」

一成は優しく、心の頭を撫でた。

「…は!ありがとうございました!一成さん!」

「いいって!あとカズくんって呼んでって言ってるじゃん!」

「いやぁ…さっきのは一成さんだったし……。」

「どっちのオレのがよかった?」

「へ!?」

「…どっちもオレなんだけどね……。」

「まあ、そりゃそうでしょ……。」

「……オレさ、ぶっちゃけ今のノリって高校からで、完全なる高校デビューなんだよね。」

「え?カズくんが?」

「そそ。」

少し遠回りしながら歩いて帰ろ!と笑いながら
一成は心と手をつないだ。

「……中学までオレ、がり勉でさ…友達いなかったんだわ。」

「想像できない……。」

「でしょ!?……このままじゃいけないって思って、キャラ作ってたんだ。でもさ、実際のところ、どちらのオレもオレであって…オレらしいオレってなんだ?って……。」

「……らしさ。」

「初めてここぴに逢った時にさ……昔のオレみたいだなって思ったんだ。」

「え?」

「ここぴも昔、何かあった感じじゃない?」

「……私も、中学までガリ勉でした…というか、うち籠りというか、インドアというか…。」

「うん……。」

「自分が大嫌いだったんです。」

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