ある休日……。

「心ー?魔法のカード3枚とポテチとコーラ買ってきて。おつりはあげるから。」

「はぁ!?自分で行きなよ……。」

至の部屋で一緒にゲーム中の心はいきなり
おつかいを頼まれた。

「いいじゃん…俺寝起きだし。」

「私もなんですけど……。誰かさんが4時まで寝かせてくれないから。」

「誰の事?てか卑猥。」

「記憶ないのかよ……。卑猥でもなんでもないし。」

「いいじゃん、深夜に物資調達依頼してるわけじゃないんだし。」

「13時はもう動きたくない時間なんだけど……。」

「……仕方ない……。スタミナ弁当も買ってよし。」

「行ってきます。」

「早いな。」

素早くとも、きっちりメイクをした心は
至から預かったお金をもって
コンビニまで急いだ。

「…ふえぇ……今日って少し寒くない?…着る服間違えたわ……。」

一応、外出なので
休日でもきちんとおしゃれをして出る心は
スカートで外に出たことを少し後悔した。

「ちょっと…!」

「ん?」

後ろから声をかけられ振り返ると
そこには、いつかの
真澄ファン軍団の4人がいた。

「忘れたとは言わせないんだけど…?」

「あ、はい……ご無沙汰しております……。」

「ちょっと来な。」

「いえ、行くところあるので……。」

(早くポテチ買って帰らないと怒られるし……。)

そう心の中で呟きながら目をそらすと

1人に肩をガッと掴まれた。

「調子乗ってんじゃねえよ!…真澄くんに近づくなって何回言えばわかんだよ!!!」

「わかんねえなら…!こうだからな!」

そういうと、心の足をドスっと鈍い音が鳴るほど
強く蹴り上げた。

「うっ…!」

「もう一回いっとく?」

「顔はやめなよ?すぐばれっから。」

「へーい!っ!」

「ううっ…!」

人気のない公園の隅まで
移動させられ、羽交い絞めにされた心に
次は、腹だな…と言いながら、女が殴りかかろうとした時だった。

「……おい、やめとけ。」

「!?!?誰!?」

「…テメェに名乗るほど安い名前じゃねぇよ…別にいいだろ……。女が女いじめて楽しいのか?」

「うっさいわね!」

心を殴るはずだった手を止めたのは
背の高い男子だった。

心からは逆光で
顔は認識することは難しかったが
左耳の3つのピアスだけ見えた。

「4人と1人はダメっしょ……。しかも無抵抗な奴に喧嘩吹っ掛けるとか、それ喧嘩じゃねえよ。」

「喧嘩じゃなくて、私たちはこいつから真澄くんを!!」

「真澄ぃ?誰だそれ…?んなこったぁ俺は知らねえけどよぉ……。俺でいいなら相手してやんよ?」

拳をゴリゴリと鳴らせた男子を見て
4人の女子は悲鳴を上げながら去っていった。

「……え?……。」

「っと……大丈夫か?」

「は……はい……。」

「そ。立てんのか?」

「はい……そこそこ……。」

「っは!なにポカンとしてんだよ!ウケる!」

「いえ……、ありがとうございました!」

「別にぃ……。暇してただけだし。」

ペタンと座り込んでいた心の前に
しゃがんで手を出してきた男子の顔を見て
心は顔を赤らめた。

「…っった……!」

「おい!大丈夫かよ!?……足赤ぇぞ!?」

「あ、さっき蹴られて……。」

「それでよく立てるとか言ったな……。ほれ。」

「え?」

目の前には、男子の大きな背中があった。

「え?じゃねえよ……。おぶってやっから、ほい。」

「でも私…買い物にも行かないと……。」

「んじゃ付き合うから、どこ?」

「コンビニまで……。」

「りょー!近くのでいいか?」

「は、はい……。」

この時
(化粧ちゃんとしててよかったー!服装もGJだわ!)
と、心は内心ガッツポーズをした。


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