きっちり3限には間にあった2人は
それぞれ各教室に向かった。

心が教室に入ると
クラスの女子が
「茅ヶ崎さん大丈夫?具合悪いの?」と駆け寄ってきた。

今まで机に突っ伏して寝ていた真澄も
その会話が聞こえてきたので
女子をかき分けて心に駆け寄った。

「遅い。」

「ごめんね……なかなか手こずって……。」

「手こずるのは俺だけでいい。」

「なんかかっこよく聞こえるけど、全然かっこよくないからね?」

「とりあえずよかった……。」

真澄と話している心に
「あ、そう言えば!」と女子が話しかけてきた。

「さっき一緒に歩いてたのって先輩???」

「え、うん、そうだよ。3年生。」

「「「やっぱり!!!!!!」」」

「ど、どうしたの?」

「摂津先輩でしょ!?いいなぁ……紹介してよ!」

「えぇ、……いやぁ……その……。」

「もしかして彼氏だった!?」

「いや、違うんだけど……!」

(紹介なんかしてみろよ……万里さんにぶっ殺される……。)

質問攻めにあっている心に、真澄は助け船を出した。

「……はぁ、万里はほぼ学校にいないから捕まらない。諦めたほうがいい。」

「え?碓氷くんも知り合いなの?」

「そう。だから諦めろ。それだけ。……心、ちょっとこっち……。」

「えぇ……!?」

真澄に腕をひかれて、心は教室外すぐの廊下に連れ出された。

「……手こずったって、万里?」

「そ、そう……。」

「……ゲームかと思った……。」

「ごめん……。」

「なんで万里と一緒に来た?」

「左京さんが一緒に行けって……。」

「ふーん……。」

「そ、その前に!真澄くんだって寝てたじゃん!咲也さんまた頑張ってたって、いづみさんから聞いた!」

「…!監督!!!!」

「恥ずかしくないの!?好きな女子に醜態さらして……。」

「俺はどんな監督でも好き。だから監督にもありのままの俺を見て欲しい。」

「知るか!……とりあえず、帰りは一緒に帰れるから。」

「そうじゃないと困る。」

「はいはい。ましゅみくんは心ちゃんがだいしゅきでしゅねー!」

「そう。」

「へ!?」

「心の事は大好き。監督は愛してる。」

「ドキッとさせんな、罪男!」

「……心も素直になればいいのに。」

「へ?」

「万里の事………。」

「………いいのよ、あんなの。」

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どうせ、小さい頃の魔法にかかってただけ

私のイメージする王子様ではなかった

ただのヤンキーだし

粘着うざいし

……それでも、たまに優しいのが
私の心を離さなくて

ずるい奴……

だから

いっぱい見ないようにしてる

一生懸命嫌いになろうとしてる

それでもさ、

そうなのかもね……

どこかで

素直になりたいのかも………

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