ポートレイトの内容を
一度、雄三に見てもらった日の夜。

至と心は
万里の様子の変化に気づいた。

いつもの通り、3人でゲームするも
なかなか万里の調子が上がらないようだった。

「……くそっ。」

「凡ミス大杉。」

「……どうしたんです?万里さん。」

「なんでもねぇ!もっかい!」

「……今日は中止。集中切れてる時にやっても負けるだけだし。」

「ちっ。」

「……万里さん……。」

「そういや、明日『ポートレイト』本番だっけ。やんなくていいの?」

「別に、確実に俺の方が芝居うめぇし。」

至は笑いながら万里に話した。

「そのわりに、なんか焦ってるみたいだけど?」

「はぁ?俺は別に――。」

「ま、いいけど。んじゃ、俺はほかる。……心ちょっと……。」

「え?……あ、じゃあ……万里さん、お疲れ様……。」

「おつっす。」

「おつー。」

2人が去った後に、万里は
「焦ってるとか……アホくさ。」と
小さく呟いた。


――――

「お兄何?」

「久しぶりに一緒にほかるか。」

「はぁああ!?馬鹿言わないでよ!!!私年ごろ!JK!」

「いや兄妹じゃん。」

「それはそれ!これはこれ!」

「まぁまぁまぁまぁ……。」

「ちょちょちょちょちょ!?」

意味もわからず
至に連行された心は
それぞれ無言で体を洗った後
少し距離を置いて
湯舟に浸かった。

「……で、万里の『ポートレイト』どうだったの?」

「え?」

「あれ?お前聞いてないの?」

「まだ動画見てない、まとめるように貰ってはいるけど……最近は春組と夏組の基礎練習に付きっきりだったから…。」

「ふーん……。でも、評価は聞いたんじゃね?」

「………うん。」

「最下位?」

「うん。」

「だろうな。」

「……お兄はさぁ……最初から演劇しよう!って思って、ここに入った?」

「そんな綺麗な気持ちなかったよ。」

「…!……そう。」

「あいつらに当てられたんだよ……。」

「あいつら?」

「咲也たちがどんどん本気で演劇と向き合っていくうちに……自分がどんどん恥ずかしくなっていった……。俺は、お前が思うほど立派な兄貴じゃない。誰かと何かすることの喜びなんてほとんど感じなかったし、ゲーム以外に熱くなれるものなんてないと思ってた。…千秋楽……俺は何故か泣いてたよ。生まれて初めて心から熱くなったんだ。」

「演劇に出会って?」

「演劇に出会うのが、監督さんを通してじゃなかったら、咲也たちに会わなかったら……こんな気持ちにはならなかったなぁ……。」

「……そっか。」

「だからさ、お前が万里の背中押してやったら?」

「…???」

「お前、演劇好き?」

「好き……最初は誘われて観た程度だったけど……夏組の千秋楽観て、みんなの熱意を寮で毎日受けると……私も一生懸命みんなをサポートしたいって思うし、メイクも今以上に勉強しようって……。」

「誰か、自分以外や俺以外を…信じてみてもいいんじゃないかって思えたんじゃない?」

「そうだと思う。」

「俺もそうなった。それを……万里に教えてやれ。心ならできるよ。」

「お兄……。」

「よし、久しぶりに妹と風呂に入れてお兄ちゃんは満足です。……先上がるわ。」

「…ちょ!私もあがるよ!!!!」

結局、脱衣所では
体を拭きながら、ブラウォーをする
茅ヶ崎兄妹がいた。

「心、回復。」

「状態異常は治らんよ?」

「え?」

prev next
back