翌日―――


「ええええ!?ちょ、万チャン出て行くって本気ッスか!?」

「何もそんな急に辞めなくてもいいだろ。これから『ポートレイト』の本番もあるのに。」

「や、考えてみたら、もう兵頭とはケリついてるし。投票とかしなくても、俺の勝ちだろ。これ以上やる必要ねぇし。」

「そんな――、一緒にやろうよ、万チャン!」

「せっかくここまでやってきたのに、もったいないぞ。」

今からポートレイト本番というところで、万里は脱退をみんなに伝えた。
必死に止める太一と臣だが、万里の気持ちは固まっているようだった。
その様子を黙って見ていた左京も、もの言いたげな顔をしていた。

「ま、最初から兵頭との勝負のために入っただけなんで。」

「……勝手にしろ。ただ、二度とこの寮の敷居をまたぐな。」

「へいへい。」

そこに帰ってきたのは、十座と心だった。

「――ただいまっす。」

「ただいまー……え?どうしたの?」

「あ、十座サン!心チャン!2人からもなんか言ってくださいよ!」

「万里が劇団を辞めるらしい。」

「……え?」

「あぁ?どういうつもりだ、摂津。」

「どうもこうもねぇよ。勝負はもうついてんだろ。」

「お前、雄三さんの舞台はどうすんだ。半端なことしてんじゃねえぞ。」

「芝居ではもう十分お前に勝ったし、これ以上意味ねぇから。」

「負けてねぇ。てめぇなんかに、俺が負けるはずがねぇ。」

「は!自分の芝居観たことあんのかよ?動画でも撮ってやろうか?」

「確かに、芝居の技術はまだお前の方がずっと上だ。でも、芝居への気持ちは死んでも負けねぇ。負けてねぇ。」

「……ほざいてろ、大根野郎。」

「――。」

「ほっとけ兵頭。こんなのに構っても時間の無駄だ。」

「……。」

「あの……万里さん……。」

「茅ヶ崎も、摂津に構うな!!!」

「ぇ……、でも……。」

「……んじゃあな。」

「万里さんっ!!!!!」

ガチャンと扉が閉まるのをただただ見つめていた心の頬には
一筋の涙がみえた。

「万チャン……。」

「……左京さん、ごめんなさい。」

そう左京に話したのは心だった。

「あぁ?」

「行ってきます。」

「どこにだ!」

「……っ!次はスタミナ弁当買ってきます!」

「は?」

そう言って心は寮から飛び出した。


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