商店街では、万里が1人
立ち尽くしているのがみえた。
「……。ちっ、イライラする。」
「万里さんっ!!!!!!!」
「…心。」
「…はぁ、はぁ……や、辞めるって……!本気じゃないですよね!?」
「あー、うん。秋組もMANKAIカンパニーも辞めっから。」
「なんで!?私の事嫌いなのは知ってるし、私も最初は万里さんの事好きじゃなかったし!」
「おい!」
「でも…嫌だよ!」
「………元々、兵頭に勝つために始めたから、芝居で余裕で勝ってるってわかれば、やる意味もねぇって言うか。」
「……。」
「んじゃ――。」
「……見たことないのに……。自分の目で!十座さんに勝ってるかどうか見たことないくせに!」
「!?!?はぁ!?今までの稽古見りゃ、十分だろ。お前だって観てねえだろ!」
「いづみさんから動画もらった!……雄三さんからのアドバイスをまとめるのに、動画の方が私がやりやすいからってお願いしてた……。何回も見た!」
「……!?」
「今日、舞台で…生で皆さんのポートレイトを見るのが楽しみになるくらいの出来だった!……万里さんを除いて。」
「――っ。」
「十座さんのポートレイトは見たことないでしょ?」
「……。」
「十座さんに勝ってるって思うなら、ちゃんと見てみてください!」
「別に見なくても――。」
「負けるのが怖いんだ……そんなの逃げてるだけですよ!」
「――。わぁったよ。確かめりゃいいんだろ。」
劇場まで万里を引っ張った心は、いづみからもらった関係者パスで中に入った。
「……どうせ見たって結果なんて変わんねぇのによ。」
「いいから!」
「……。」
練習をしっかり重ねてきた4人のポートレイトは
最初の頃とは見違えるほど良くなっていた。
中でも十座の成長には魅せられるものがあった。
舞台が終わり、観客がどんどん外に出ていく中、万里は席を立つことを、なかなかせずにいた。
「……。」
「あ、いづみさんからLIMEだ……。万里さん、アンケート、前座投票だけ先に集計してもらったみたいですが……結果聞きに行きますか?」
「……んなもん、聞かなくてもわかってる。兵頭だろ。」
万里は力ない声で、心に話しかけた。
「心、教えてくれ……。どうしたら俺は兵頭に勝てる?」
「万里さん……。」
「なぁ、どうすればいいんだ?」
「……私は演劇は専門じゃないからよくわからないけど……。偽らないこと…ですかね?あとは、十座さんに負けたくないって気持ちが、万里さんを動かすんじゃないですか?」
「……。兵頭の『ポートレイト』見て、なんかわかんねぇけど熱くなった。あいつに喧嘩売って負けた時と同じくれぇ、興奮した。このままじゃ、終われねぇ、終わらせられねぇ。」
「……うん、私も万里さんの事全力でサポートします!だから……リーダー、頑張りましょ!……一緒に、寮帰りませんか?」
「………今更だろ。」
「話せばきっとわかってくれますよ!いづみさんもそろそろ来ますし……ね?」
「……。」
「あ、そうだ、万里さん……私もね!騙してたこと言わなきゃ……。」
「何だよ……。」
「あの日、本当はサラダパスタじゃなくてスタミナ弁当が食べたかった。」
「はぁ?!」
「一応懺悔。私も万里さんとまっすぐに向き合いたいから。」
「……ばっかじゃねえの?んなの寮でのお前の食欲見てたらわかるっつーの!」
「あはは!ばれてた!」
裏方の仕事を終えたいづみが2人の元にやってきて
3人は一緒に寮へ帰った。
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