103号室の扉を誰かがノックする音が響いた。
「……何?万里??。」
「ういっす……。至さん1人っすか?」
「うん、1人だけど、どうした?」
「いや……、心は?」
「幸の所、旗揚げ公演の衣装の作成に借りだされてる。」
「そうっすか……。」
「何?俺に用じゃなかった?」
「いや、至さんがいいんすけど……。」
「?……まぁ座れよ。」
「うっす……。」
大きめの黒いソファーに腰かけると
万里はため息をついて話し始めた。
「………心って……、どんな奴がいいんすかね?」
「………は?」
「あ、いや……実兄に聞くのもどうかとおもったんっすけど……その……。」
「お前…マジか。」
「なんすか?」
「いや……、いきなりどうした?」
「……今日、学校で耳に入ったんすよ…心の噂。」
「ん?」
――――
――――
――――
「なぁ!さっきのって2年の茅ヶ崎じゃね!?」
「だよな!くっそかわいいー!」
「勉強できるし、運動できるし、非の打ちどころがねぇよなぁ……。」
「彼氏いんのか?」
「いないって聞いたぞ。」
「まじかー!俺アタックしてみようかな!?」
「やめとけって…お前じゃ釣り合わねぇって。」
「ひっでぇ!」
何気ないクラスの男子の会話。
心ってそんなにモテんのか……。
なんだこのざわざわした感じ……。
意味わかんねぇ……。
「そういや…摂津、さっき茅ヶ崎さんに手振ってもらってたよな…うらやま……。」
「あいつ顔いいもんな……。」
小声で話してるつもりかよ……聞こえてるっつーの……。
そもそも心が俺に手を振るのは
ただの……知り合いで……そんな特別な………関係……。
特別な関係………か……
あぁ、もし本当に心に彼氏なんかできたら
今以上に狭まることはない関係………。
唯一、今俺があいつらに対して優越感に浸れるのは
帰れば、おかえりも、おやすみも、おはようも言える
MANKAIカンパニーの関わりだけ……
俺はどうしたい?
今以上に……どんな関係になりたい?
………なんでだ?
なんで心なんだ?
一生懸命なあいつ見てると
俺もあいつの期待に応えたくなる……。
訴求力だけじゃない
あいつには……
包容力がある………
俺はきっと……。
――――
――――
――――
「完璧に包まれたな。」
「……っす。」
「相変わらずモテるな、あいつ……。中学の時は他校の生徒から猛アタック受けてたし……。」
「まじっすか……。」
「心はいい子だよ。俺にはもったいないくらいの妹だよ。少し口は悪いけど。」
「至さんは……俺の事どう思ってるっすか?」
「万里の事?……粘着うざい。」
「ひっでぇ……。」
「はは!冗談だよ……。もし万里が本気で心の事考えてくれるなら、俺は嬉しいけどな。」
「え?」
「あいつは俺が甘やかしすぎた部分が多くてさ……。彼氏いたことないんだよ。いつも乙女ゲーさせてた。」
「洗脳かよ………。」
「人聞きわるい……。恋愛初心者気味の万里にもおすすめあるけど?」
「そういうのいいっす。」
「そう?……イージーモード?」
「いや……ハードっすわ。」
「エキスパートじゃない分マシ?」
「L4Dで言うとリアリズム……。」
「先が見えねぇじゃん。」
「……はぁあああ………。」
「喜べ。俺の情報が正しければ処女。」
「ッシャ……。」
「ふっ……。よゆーとかいつも言ってる万里が落ち込んでるのメシウマだな。」
「おいっ!」
「頑張れよ。俺は応援するよ。」
「至さん………。」
「あとさ、お前……この写真見て、なんか思い出すことある?」
「ん?……くっそ画質悪いッスね……。」
「俺が中学の時のガラケーだからな。」
「………覚えてるも何も……これ俺が結ったんっすよ……。」
「やっぱりな……。心の勘違いじゃなかったか…。」
「え?」
「いや、なんでも……。そのうち、俺の事お兄さんって呼べるようになるといいな。」
「はぁあ!?」
「あれ?違った?……とりあえず万里、フォートナイト付き合え。」
「りょーかいっ!」
「あとさ……万里。」
「んー?」
「……心の過去もすべて……受け入れてやってくれ。」
「?」
「ここのMANKAIカンパニーの人間みたいに相性のいいやつには笑って話ができんだけどさ……。極度のコミュ障なんだよ。」
「あれででっすか?」
「自分に自信がないって…。だから化粧して、普段の自分隠して学校行ってんの。だから守ってやってね?」
「……了解っす。」
「そして万里……。壁作ってくれ。狙われてる。俺も守って。」
「はぁああ!?」
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