秋組の旗揚げ公演チケットの販売もついに開始した頃。
宣伝もかねてのストリートACTに
秋組といづみは町に出ていた。

2人1組に分かれてのフライヤー配りでは
万里と十座が一緒に
天鵞絨駅前の担当になったようだった。

「……。」

「………。」

2人とも、だんまりとした空気は変わらず……
見た目から恐怖心を与えるのか、十座に関しては
フライヤーを配っているだけにも関わらず、通行人はビクッとしながら
避けて行った。

それを見ていた万里は、少し呆れた声で
十座に話しかけた。

「おい、てめぇ、いい加減にしろよ!」

「何がだ。」

「てめぇと一緒じゃ、いくらやっても終わらねぇよ!どうすんだよ!?」

「ストリートACTで人集めりゃいいんだろ。」

「あ?あー、そーいや、監督ちゃんが言ってたっけか。よし、やるぞ。」

2人は設定を決めて
さっそくストリートACTを始めた。
だが、通行人からは
「大根だな……。」という反応だけで
終了した。

「意味ねぇじゃねぇか!この大根が!」

「いちいちうるせぇな。びいびいわめくな。」

「チラシも配れなきゃ、演技も出来ねぇじゃねぇか!」

「んだと?さっきから文句ばっか言いやがって。」

「やんのか、コラ。」

「なめてんじゃねぇぞ、コラ。」

実際の喧嘩とだけあって
通行人も「次はヤンキーものが始まったぞ!」と
食い入るように見始めた。
不本意ながらも好評で、そのままフライヤーはどんどん
はけていった。

「あぁ?なめてんのはどっちだ、ボケ。」

「あぁん?てめぇに決まってんだろ、ワンレン。」

「ワンレン悪口に使うな、ハゲ!」

「うける、どこの劇団?」

「MANKAIカンパニーだって。チラシもらってこ。」

「……。」

「……チラシはけたぞ。」

「……ったく、見せもんじゃねぇっつーの。」

「どこ行くんだよ。」

「十分はけたからいいだろ。ちょっと休憩させろ。」

「すぐ戻って来いよ。」

「へいへい。」

万里は軽く返事をして、その場を離れた。

――――
――――
――――

別の場所では、心が幸の付き添いで
衣装の小物を探しに、出かけていた。

「ちょっと、こっちとこっちだと、どっちの方がいいと思う?」

「んー……右手に持ってる方かな?」

「了解。……にしても、今日暇だったの?簡単について来てくれたけど。」

「お兄が休日出勤になったみたいで、ゲームする相手もいなかったしねー…。私も次のイベントでやるコスの小物に近いのあったら買って帰りたいし。」

「ふーん……。」

2人で商品を見ていると、数人の青年が
心に話しかけてきた。

「あっれぇ?茅ヶ崎ちゃんじゃん?」

「え???どなたですか?」

「あー、知らない?同じ学校なんだけど。」

「そうそう、万里のツレ。」

「…あ、そうなんですね!」

「休日なのに、万里と一緒じゃねぇんだ。」

「万里さんは今、フライヤー配りに……って…みなさん本当に万里さんのお友達ですか?」

「え?なんで?」

「友達なのに、休日の予定とか知らないんですか?皆さん一緒ってことは遊ぶ予定だったんじゃないですか?一度誘って断られたなら、理由ぐらい知ってるはずでは……。」

「万里が教えなかっただけだろ……、あー…あと、碓氷とまだつるんでんのな?もうやめた方がいいぜ?尻軽って広められるぞ。」

「……何でですか?真澄くんとはお友達です。」

「万里と付き合ってるのにか?」

「……へ?」

「あれ?違うのぉ!?こないだ一緒に帰ってたでしょおお?」

「それは……っ。」

「俺の彼女が、すっげぇ訴えてくんのよぉ…少し可愛いからって男全部とって食ってるって!ぎゃはははは!」

「お前らいい加減に…!」

見ていた幸も耐え切れなくなって、言い返そうとするも
心は、幸の前に手を出して、下がるように指示した。

「私はそんなことしてません!」

「へぇー…まぁいいや、おめぇら、行こうぜ。」

「おう、じゃーな!茅ヶ崎ちゃん!」

去っていった男を見送った後、幸は
怒鳴り始めた。

「何あいつら!感じわっる!」

「……万里さんに迷惑かけちゃった……。真澄くんにも……。」

「はぁ?そんなことあるわけないでしょ!万里も真澄も心と居たいって言ってんだから!気にしすぎ!」

「…っ、でも……。」

「でももだってもないでしょ!……ってか、ネオヤンキーと付き合ってんの?」

「まさかっ!!!……万里さんは……そんなんじゃないよ……。」

「……ふーん。」

――――
――――
――――

万里が休憩に入ってしばらくして
天鵞絨駅前にいる十座の元に
ガラの悪い青年が数人やってきた。

「……。」

「おい、さっきの芝居見てたぜ。」

「ーー。」

「ひっでー出来だったよなぁ。」

「あぁ?なんだてめぇら。」

「万里の奴もあんな茶番に付き合うとはなー。」

「落ちたっつか、キャラ変わったよなー。かっこわりぃ。」

「せっかく学校1の美人彼女にしたってのに、うけるよな!」

「――黙れ。」

「はぁ?」

万里を悪く言われた事が頭にきた十座は
大きな声で怒鳴りつけた。

「黙れって言ってんだよ――!」

「おーこわ!」

「暴力カンパニーだって拡散しようぜ。」

「動画撮れ、動画。」

しまった、と思った十座は
悔しそうな顔をしながら、静かになった。

「んだよ、やんねーのかよ?」

「O高最強の不良がヒヨってんじゃねーよ!」

「今ならボコれんじゃね?」

「――っぐ。」

「おら!やり返して来いよ!」

十座は殴られてもやり返すことなく、ただ痛みに耐え続けた。

「――っ。」

「まじで、サンドバッグじゃん!」

「――げほっ。」

「O高最強完封記念!イエー!」

そこに万里が怒鳴りながら帰ってきた。

「――おい、何してんだ、てめぇら!」

「あぁ?んだ、万里戻ってきたんかよ。」

「なんで…ここにいんだよ……。」

「万里のかわいい彼女ちゃんに教えてもらいまちたぁ〜!」

「はぁ?彼女?…んなの俺にいねぇぞ?」

「あれ!?茅ヶ崎ちゃん違うの!?」

「……っ!お前ら!心に会ったのか!?」

「何もしてねぇから安心しろって!それより…一緒にやる?今ならO高最強余裕っしょ。ってかO高最弱か。」

「たしかに!」

「ふざけんな。」

「んだよ、もしかしてマジでこいつとつるんでんの?まさかの友情ごっこかよ〜泣けるな。」

「やっぱキャラ変わったよな〜うざキャラ?」

「あーん!茅ヶ崎ちゃん可哀そうっ!」

「それなー!!!!」

「……黙れって言ってんだろ。」

「はいはい、お友達の万里ちゃんの悪口ゆるちまちぇんってか。手も足も出せねぇくせに、さっきからよく言うよな。」

「てめぇら、マジでぶっ殺す――!」

「――っ。」

「やめろ、摂津――。」

万里を止めに入った十座と同時に
綺麗な銀髪の中性的な男性が
「お巡りさん、こっちです!」と
叫びながらやってきた。

「こっちで喧嘩が――!」

「…やべ。」

「行こうぜ。」

その言葉を聞いて、青年はさっさと逃げ出した。

「……ふう、大丈夫だった?」

「警察は?」

万里が不思議そうに聞くと
「演技だよ。」と言いながら
ニコっと笑った。

その後、フライヤーを貰っていくと言った男性は
少し派手めな女性と
去っていった。


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