その日の夜
1人でコンビニまで歩いていく心の後ろに
昼間のガラの悪い青年がつけていた。
気配を感じた心が、ふと後ろを振り返ると
ニタァと笑いながら心を軽く気絶させ、近くの公園まで
連行した。
「スマホスマホ……あった、指紋借りるぜ…?」
「……あの野郎……一発殴らねぇと気が済まねぇな……。」
――――
――――
――――
「心ちゃんがまだ帰ってきてない!?」
「うん……コンビニに行くだけだからって1人で出ちゃって……。」
中々帰ってこない心を心配して
談話室では、全員そわそわしていた。
「とりあえず、迫田に外回りをさせる。……いけ、迫田。」
「あいあいさー!」
「心……。監督さん、俺は車でこのあたりを周るよ。」
「至さん……気を付けてくださいね?」
時間確認のためにスマホを見た万里は
LIMEが来ていることに気づいた。
「ん……?……っ!くっそっ……!」
「どうした、摂津。」
「………いや、なんでもねぇっす……。俺も周ってくんわ。」
「摂津、万が一があると危険だ。兵頭と行け。」
「…………了解っす。」
「?」
玄関まで出た万里は、十座に話をした。
「……心が、捕まってる。」
「…!?どこに!?誰にだ!?」
「昼間のあいつらに……近くの公園だ。俺一人で行く。」
「あぶねぇだろ!」
「それが解放条件だ……兵頭はぜってぇくんな。」
「じゃあ、なんで俺と行くって左京さんに嘘をついた!」
「俺一人で行くって言ったら、怪しまれんだろ。だから同意した。」
「俺はどうする気だったんだ。」
「兵頭なら話しても、ちゃんとわかるって思ったんだよ!……頼む、行かせてくれ。」
「……わかった。気をつけろよ、摂津。」
「……おう。」
――――
――――
――――
「ん?何……?」
「お?目ぇ覚めちゃった!?おはよう……。」
「……っ!昼間の……っ!」
「よぉ!お久しぶり!今お迎え来るからおとなしく待っててねぇ?」
「お迎えって……誰呼んだんですか!!!」
「そりゃあもちろん……。」
影になっている公園の隅に
大きな声で現れたのは
万里だった。
「おいてめぇら!汚ねぇマネしてんじゃねぇぞ!!」
「……っ!万里さんっ!」
「やーっと来たぁ……。なぁ、万里?俺らお前には世話になったけどよぉ、あんな裏切りねぇだろ?」
「裏切り?なんのことだよ……世話してやった覚えもねぇな。」
「万里よぉ、こいつんこと好きっしょ?だから、目の前で痛ぶるなり犯すなりしてやろうと思うんだけど、どう?俺らの事殴る?」
「そしたら俺ら、暴力カンパニーって拡散する予定なんだけどさ!?どっちがいい!?」
「…っ!てめぇら……っ!」
万里が殴りかかろうとした瞬間、心は大きな声で
止めた。
「万里さんだめっ!!!!!!!!!!」
「…っ!」
「私はいいから……、少し我慢すれば、なんてことないから……っ。」
「少しの我慢じゃすまねぇぞ!?」
「それでもっ……、万里さんの本気に…私はお手伝いがしたいからっ…!」
「っはははは!じゃあ俺と仲良くしようか?ちーがさーきちゃん?」
「やめろーっ!」
「お前には万里やるよ。」
「うぃー!」
「っ!?話と違うじゃない!私だけでいいでしょ!?万里さんは逃がしてよ!」
「逃がしてったって……あいつが勝手に来たんだろ?んじゃ……楽しもうね?」
青年がハサミで心の服を裂こうとした瞬間
もう一人の青年は木製バットをもって、万里の元に歩いて行った。
瞬時に考えた心は、右かかとで
羽交い絞めにしている青年の足を踏み上げた
「っ!!!ったぁあ!!!こんの!!!」
走り出そうとした心の髪を青年はぎゅっと握った
「っ!!!」
「……っ!やめろ!心の髪に触れんじゃねえ!!!」
心が足元を見ると、先ほどまで青年が持っていた
ハサミがみえた。
「っ!!!!ふんっ!!!!!!!」
「えぇええ!?」
掴まれていた髪を勢いよく切り離した心は
途中に転がっていたもう1本のバットをもって
万里の前まで走っていった。
「……なっ!」
「……っ!心……お前……っ。」
「万里さんは下がってください……。私なら正当防衛が成立します。」
「生意気いってんじゃねぇぞ!このクソアマがぁああ!」
「それはこっちのセリフだクソ野郎共がぁああ!!!」
バットとバットが勢いよくぶつかり
青年のバットは宙を舞った。
「…えぇ!?」
「……まだやる?」
「くっ……。」
「覚えてろ……っ!」
青年が去っていったあと、しばらくの間
万里と心に沈黙が続いた。
夜風は、いつものように
心の長い髪を揺らすことはなく
万里の目に映るのは
短髪になった心のうしろ姿だった。
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