≪昔、初恋の男の子に褒められたからって。でも名前も知らないし、どこの誰かも知らないから、昔のまま、きれいに髪を伸ばしていればいつか出会えるかもって。≫

万里の頭の中には、天馬から教えられた
心がなぜ、髪を伸ばしているかの理由が
ループしていた。

至に見せられた写真で、その相手が自分だと確信し、自分の心への気持ちも気づいた…。
その矢先の事だった……。

自分にもう一度会いたいと願ってくれていたこと……。
それなのに、自分は心の思う相手ではなかったと、一度突き放されたこと。
終いには、あれだけ気に入っていた長い髪を、自分のせいで切らせてしまったこと。

今までにない後悔という後悔が
万里を襲った。

「……心……お前……。」

「……万里さんが無事でよかった!」

「っ!」

大きな満月に照らされ
振り返りながら満面の笑みで、万里が無傷でいることを喜ぶ心を見て、万里は自然と心を抱きしめていた。

「……っ!?」

「…っ、なんでそんなに笑ってんだよ……っ!」

「なんでって……。万里さんが無事だからですよ……。」

「……っくそっ!……本当は今、自分が一番苦しいくせにっ…!」

「…何でですか?」

「髪伸ばしてたの……まじないだったんだろ?天馬から聞いた……。初恋の男子に会いたいからって……。」

「万里さん……。」

「お前の思うあの頃の俺じゃねぇ……。もっと……心が思っている俺になりたかった……それまで……っ!」

「それまで、伸ばしていて欲しかったですか……?万里さんは……髪の長い女性が良かったですかね……?」

「違う!そうじゃねぇ!……少しでも……お前の夢を叶えたかったんだ……。」

「……もう、しっかり叶いました。あの頃の男の子は少し、やんちゃになりすぎてたけど……昔のまま、優しいです。」

「心………。」

「だから私も、守りたかった……。あなたを。」

「――っ!」

「万里さん…私、万里さんの事……。」

「まて!……俺が言うから……。」

「…っ。」

立膝をした万里は、右手を胸に当てて心を見上げた。

「キャラにねぇことすっから……1回だけだぞ?………ずっと想っていました、俺だけの姫になっていただけませんか?」

「っ…!!/////////なんでそれっ///」

「ははっ!何で知ってんの?って?…至さんから聞いた。心の好きなシチュエーションだって。」

「っ―!!!!//////」

「で、どうなの?」

「……っ、はいっ、喜んで……マイプリンス……。」

「っ!///返しそんななの!?聞いてねぇよ!!!///」

ぐっと、心の手を握った万里は
もう一度抱き寄せた。

「……あんがとな……。女に助けられるとか、くっそ恥ずかしい…。」

「えへへ……、ちょっと怖かった……。」

「無茶すんなよ…バカ。」

「……はい……。」

手を繋いで寮までの道を歩いていると
車で周っていた至に遭遇した。

「万里!心!やっと見つけた……。え?……心…?お前、髪どうした…?」

「あー……その…これはっすね…至さん……。」

「……えへへ!万里さんとお揃いなの!似合う?」

至は、少しの間驚きはしたが、柔らかく微笑んで
「心はなんでも似合うよ。」と話した。

寮に帰った万里と心は、その後
理由を話して、左京からのお咎めは軽減した。

部屋でゆっくりしている心の元に
新聞紙とハサミとコームを持った万里が訪れた。

「…よ!」

「どうしたの?万里さん……。」

「さすがに切りっぱなしで、明日の学校行けねぇだろ?……整えんぞ。」

「万里さんが?できるの!?」

「スーパーウルトライージーモード。」

「ふっ、はいはい!」

「……俺とお揃いなんだろ?」

「嫌だった?」

「んなわけあるか、大歓迎。」

「……そっか。よかった。」

「…おう。」

「あー!万里さん、今少し照れたでしょ!」

「うるせぇ!少しは静かにしろ!チビ!」

「はぁああ!?何よワンレン!」

「そりゃ、お前も今からワンレンだろ!」

キュンとしたのは一瞬だったな……と苦笑いした心に
万里は、ニヤっと笑いながら

「俺の彼女が世界一可愛いわ……。」

と、心の耳元でささやいた。


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