その後、公演は無事に3日目を迎えた。
特におかしなこともなく、誰もがこのまま
今日の公演も無事に終えられればと願った。

休憩が終わるまで、残り10分となった頃、いづみは楽屋の様子を覗きに向かった。

その頃、楽屋では……。

「……はい、左京さん。メイク直し終わりましたよ!」

「茅ヶ崎、今日もいい出来だな。ありがとう。」

「いえっ!」

「……やべぇな。」

「…?万里さん、どうしましたか?」

「小道具のピストルが1つもねぇんだ……。」

「え!?…と、とりあえずいづみさんに!」

「今、支配人に呼びに行ってもらってるよ。」

臣も楽屋を探しながら、心に答えた。

「よりによって、公演中かよ。」

次のシーンで多く使用する十座も焦っていた。

そこにやってきたいづみも
「何があったの!?」と楽屋に駆けこんだ。

「いづみさん…!」

「小道具のピストルがなくなった。」

「え!?」

探していた臣も顔を上げて
「1つ残らず消えてる。」と伝えた。

「休憩終わるまであと10分もないか……。代わりを手配しても間に合わねえ。かくなる上はモノホンのチャカを……。」

「左京さんが言うとシャレにならないですし!色々アウトですし!」

心が必死に止めると、臣は
「次にピストルを使うのは誰だ?」と聞いた。
それに答えたのは十座だった。

「休憩明けの次のシーンか……。どう考えても間に合わないな。」

支配人も
「もうすぐ休憩終わります!」と焦りながら
団員を呼びに来た。

「とにかく舞台を空けるわけにはいかねぇ。出るぞ。」

「っす。」

「くそ、やるしかねぇか。」

「そうだな……。」

「……。」

いづみが焦る中、アナウンスは
休憩明けを知らせる。

休憩明けのシーン。
舞台にいるのはルチアーノだが、タイミングを間違えたカポネが
袖から現れた。

このままでは話が繋がらないと考え出したいづみに
十座は「俺に任せてくれねぇか。」と声をかけた。

「え?でも十座くんの出番はまだ後だし、それにピストルが――。」

「――。」

十座の機転のおかげにより、話は繋がったが、銃不足については
どう解決するのかと
いづみも心も祈るように舞台を見た。

『ボス、ソイツから離れてください。』

『!?』

『ランスキー……。』

そこには、手でピストルの形を作るランスキーがいた。

これには観客席からも
「あれ、手じゃない?」という声でザワザワしはじめた。

「…心ちゃん、どうしよう……。このままじゃ舞台が……。」

「……いづみさん、信じましょう。」

「え?」

「お芝居や舞台って、道具があるもの以外の表現もできると思うんです。落語や朗読劇は身振り手振りで観客に多くの想像を与えて…それはとらわれない、その観客だけが見ることのできるお芝居になります。」

「え?」

「…本来は小道具がある劇ではありますが、今日だけ、少し観点を変えた劇だと思えば……楽しくないですか?」

「心ちゃん……。」

「メイクだけじゃだめだと思って、最近、舞台のお勉強もしてるんです…。」

いづみが舞台を見ると
カポネはランスキーに「後は任せたぞ。」とはけており
ルチアーノとの2人で劇を続けていた。

「……なんか、ピストルに見えてきた。」

「わかる。撃った時の反動とかさ、タイミングがリアル。」

「うんうん。」

観客席からは、徐々に「ピストルに見える。」と言った反応が伺え
いづみは嬉しそうに心を見た。

「いづみさんっ…!いぇい!」

「っ!いぇいっ!…次の舞台では、ちゃんと小道具が間に合うように手配してくるね!」

「はいっ!私がここで見てますから、いづみさんはどうぞ!」

いづみは関係者席にいる迫田の元に急いだ。

その後、3日目最後の公演は
無事に終わった。


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