翌朝……。
「んじゃ、今日のミーティングはこんな感じで。」
昨夜提案した通り、ミーティングを終えた万里が締めの言葉を言うと
左京が「1ついいか?」と話を出してきた。
「昨日のミスはすまなかった。今後は気を付ける。それから今まで役者として若い奴らに道を譲るため、一歩引いてた部分がある。でも、監督に発破をかけられてな。これからは、舞台の上でお前らを食う勢いでやる。お前らに言うことは1つだけだ。俺に食われるな。以上。」
「……後半、昨日ミスったおっさんが言う言葉かよ。」
ニコニコしながら、万里は話した。
「おい、万里。」
「まぁ、それもそうだな。だから、おっさんも舞台では必死にならねぇとって話だ。覚悟しとけよ。」
「…こえぇな。」
「…全力でやり返す。」
十座の言葉に、左京も「上等だ。」と答えた。
「はは。みんな、お手柔らかに頼むよ。でも、そういうことなら俺も負けられないな。」
その日の公演……。
左京の演技は今まで以上に伸び、本当に万里をのみ込んだ。
袖で待機していた心は、今まで何度も見てきたピカレスクの中で
最高の出来では?と感動した。
はけてきた万里は少し悔しそうに「――くそ。」と小声で話した。
「だから言っただろうが。」
左京の言葉に、十座は「ぜってー負けねぇ。」と言い返し
万里も「次はやり返す。」と左京に宣言した。
その光景を無言でみている太一に気づいたのは臣だった。
「太一?」
「……ごめ、俺っち、トイレに行ってくる。」
「太一くん、メイク直しあるから、少し早めに戻ってきてね?」
「…っす。」
「…???」
元気のない太一に気づいたいづみと心に、左京は「ほっとけ。」と伝えた。
「え?でも――。」
「今、監督さんにできることは何もない。」
「――。」
心はやはり、左京は何か気づいているのでは?と今までの曖昧にしていた憶測が
確信に変わったようだった。
その日の公演後、寮に帰ると心は106号室の前で左京に話しかけた。
「あの、左京さん……。」
「どうした?」
「…太一くんの事、何か知ってますよね?」
「……何がだ。」
「もしかしてですけど……――。」
「――……。ああ、俺もそう考えている。」
「っ……。やっぱり。」
「だからと言って、俺たちが何かできるわけではねぇ…七尾次第だろ。」
「…そう、ですよね……。」
「残るは千秋楽だ。無事に終わればいいだけだ。」
「でも……っ!太一くんは、このMANKAIカンパニーの仲間じゃないですか!それでいいんですか!?」
「茅ヶ崎……。」
「何もできないのは、少し……辛い気がします……。」
「……。」
「私も昔は、こんなに人の事を考える事はしませんでした。人間なんてわがままで、いつか絶対裏切るって思ってました。だから深い関わりも親しい友もいらないって思ってました!でも……っ、ここに来て……楽しいんです!誰かのために一生懸命になることも、考えることも!」
「…茅ヶ崎。1つ教えてやろう。」
「?」
「信じることも……大切に思っていることの1つだ。」
「え?」
「お前はこのMANKAIカンパニーでこんなに成長しているんだ。七尾を信じて待ってろ。」
「……っ、はい。」
「よし。談話室にいくか?」
「はい……っ!」
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