楽屋ではキャスト全員分のメイクをする心。
衣装の最終チェックをする幸たちが
バタバタと準備に追われていた。

キャストメイク、最後の万里の番になり
メイク台の前に座った。

「ふぅ……。万里さんお待たせしました……。」

「お疲れさん。1人きっついだろ?」

「うん、少し……。もう1人くらい欲しいなぁ……。そうなると雇わなきゃいけなくなるからって……。」

「厳しいのか?」

「んー……。まだ私が1人で回せてるし、左京さんにわがまま言うのもダメかなって……。」

「それでお前が倒れたらダメだろ!代わり出来るやついねぇのに!」

「まぁ、そうなんだけどぉ……。目、閉じて?」

「あいよ。」

「……まつ毛なっが……。」

「羨ましいだろ?」

「今はまつエクっていう技術もありますぅー……。はい、いいですよ。」

「ん。」

「…千秋楽ですね。」

「あぁ。」

「……昨日のポートレイトで、秋組はやっと1つになれたと思ってます。だからきっと大成功で終わりますよ。」

「そうだな。」

「………頑張ってくださいね?」

「あったりめぇだ。」

メイクが終わると、トイレに向かった太一を迎えに行く様に
十座と万里は楽屋を出た。

「トイレ、トイレ――。」

急ぐ太一の前にGOD座のレニが現れた。

「――太一。」

「――っ。」

隣には、晴翔と丞も来ていた。

「約束通り観に来たよ。」

「……ありがとう、ございます。」

「……わかっているな、太一。」

「――。」

「千秋楽の成功祈っているよ。」

「お、俺は……。」

口ごもる太一の元に駆け寄ったのは
万里と十座だった。

「太一。」

「こいつか。」

「万チャン、十座サン――。」

「……やあ、キミたちの監督から招待状をもらってね。千秋楽、がんばって。楽しみにしているよ。」

「くせぇ芝居はやめろ。てめぇがこいつにやらせたことは、もう知っている。」

十座がレニに静かに強く言うと、レニも間を開けて
「……おや。」と顔色を変えた。

「…で、太一は今後も俺たちの仲間としてやってくことになったから。今までどうもお世話になりました、と。」

万里の言葉に背中を押されるように、太一も
「俺は、もう戻りません。」と強く話した。

「……。」

「二度とこいつに近づくな。」

「せいぜい行儀よく座って見てろよな。」

「……ふん。行くぞ、丞、晴翔。」

レニは2人を連れて、不機嫌そうにその場を後にした。

「万チャン、十座サン、ありがとう……っ。」

「まだ泣くなよ?メイク崩れるぞ。……んなことになったら心が怖えからなぁ…。」

「……っうん。」

「行くぞ。早くしねぇと、始まる。」

3人は楽屋に戻り、GOD座のレニと話したことを全て伝えた。

「俺っ…、本当に秋組のっ……。」

「おいこら太一、まだ泣くなっつっただろ?」

「うぅっ……。」

「んあぁあああ!メイクがあああああ!太一くんストップストップ!!!まじ勘弁だってぇええ……。」

「ごめ、ごめん…心チャン…。」

心は太一の顔を覗き込んで
「今日は多めに見てあげる。」と微笑んだ。

「これで太一も『MANKAIカンパニー秋組の七尾太一』になれたな。」

「ちゃんとケリもつけてこれたみてぇだしな。」

「……うんっ…!」

「……もぉお!臣さんも左京さんも泣かせないで!どんどん涙で流れてくじゃん!直してる最中なのに!!」

「ご、ごめんな…。」

「すまん……。」

楽屋で一番怖いのはメイクの心ではないか…?と
みんな怯えたことは内緒だ。

誰の邪魔も入ることのな千秋楽。
きっとみんなのびのびと演技ができると
いづみも心もワクワクしながら舞台に目を向けた。


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