1人スーパーに来た心は、なるべく安く買うように心がけながらも新鮮な食材を選び購入した。

「にしても…すごい量だよね…これから冬組が結成したらもっと増えるし……1人で来るんじゃなかった……。」

大量の買い物袋を両手に抱えて、ヒーヒー言いながら歩く心の前に、ストリートACTに出ていたメンバーとプラス2名の男性が見えた。

「もしかして、ストリートACTで団員ゲットしたのかな?……みなさーん!!!!」

大きな声で叫ぶと、全員ザッと心の方に振り返った。

「おい心っ!本当に1人で買い物行ったのかよ……くっそ、こんな重いものを……。」

「えへへ……。」

万里は駆け寄って、心の手から全部の買い物袋を引き上げた。

「全部は悪いんで、少し持つよ…。」

「だめだ!!!お前の腕が折れる。」

「折れないし!!!」

「あはは、本当に2人は仲がいいんだね…羨ましい。」

紬は微笑みながらも、少し寂しそうな顔をした。

「???」

「あー!腹減ったッスー。」

「臣、今日の夕飯なんだったっけ?」

「チキンの香草焼きとほうれん草のパスタの予定だよ。あと心がスープとサラダも担当してくれるって。」

「すみません…思った以上に買い物多くて、下ごしらえまで回りませんでした……。」

「気にするな。ありがとうな、心。」

「っし。カレー回避。」

万里は嬉しそうに笑った。

「デザートは?」

「レアチーズケーキ。」

「あざっす。」

東は「食事は団員が作ってるの?」と臣に聞いた。

「いや、俺や心は好きで手伝ってるだけっす。」

「臣くんの料理はいつも凝ってておいしいんですよ!心ちゃんもとっても上手で!」

「食べることが好きなので、自然と作るようになっただけですよ、私は。」

「そうなんだ。楽しみだな。」

「あ、そう言えば……団員さん2名増えたんですね!」

心がそう言うと、赤髪、三白眼の男性が
「有栖川誉だ。詩人をしている。」と自己紹介をし
もう1人の男性も「高遠丞だ。」と簡単に名乗った。

「高遠さんって…GOD座にいらっしゃった方ですよね?何回かお芝居見に行きましたよ。」

「!?!?心、俺に内緒でいつ行ったんだよ!」

「はぁ?いつだっていいでしょ?……少しでもお芝居の勉強が私もしたくて……、でも例の件以来行きにくくなっちゃったから観には行けてなかったけど……。辞められたって本当だったんですね。」

「ああ……。色々思うことがあってな。」

「へぇー……。」

寮に近づくと、入り口付近に人が倒れているのが見えた。

「ひ、人が倒れてるッス!」

「おい、誰か警察呼べ。」

「け、けけけけ警察って117だっけ!?104だっけ!?」

「落ち着け心!どっちもちげぇ!」

「団員じゃないの、カントク?」

「知らない人です。」

「死体の周りにチョークで枠書かねーと!俺、持ってくるッス!」

「太一も落ち着け。」

左京は冷静に、倒れている男性の口元に手を当てて息を確認した。

「……生きてるな。気絶かと思ったが……。」

「すぅすぅ……。」

「……どうやら寝てるだけだ。」

「こんなドアの真ん前で!?」

「いづみさんの言う通りですよ!なんでピンポイントで!?」

「何かの病気じゃないか。」

「眠り姫かもしれないよ。」

「男だから、どうだろうね。」

「じゃあ、眠り王かな。」

誉の発想に、太一は
「一気に大食い王みたいになったッス!」とつっこんだ。

紬が「病気なら頭を打っている可能性もあるんじゃ−−。」と心配するも
どこにも外傷はなく、とりあえずの所、談話室に運ぶこととなった。

−−−−
−−−−
−−−−

「すぅすぅ……。」

「目を覚ます気配がねぇ。」

「大丈夫か、コイツ。」

「これだけ動かしても目を覚まさないっていうのは、少し心配だね。」

「やっぱり救急車を呼んだ方がいいんじゃないですか?」

「うーん、そうですね……。」

あーだこーだと言い合っていると、行き倒れていた男の目がかすかに開いた。

「ん……。」

「あ、目を覚ましたよ!」

「……。」

恐る恐る、いづみが「大丈夫ですか?」と声をかけるも
男はまた眠ってしまった。

「って、また寝るのかよ!」

これにはキッチンで下ごしらえをしていた心と臣も笑い出した。

何度か、起きては寝て起こしては寝てを繰り返し、紬は
「起こせば起きるんですね。」とどこか安心したように笑った。

「病院に行きますか?」

「……ううん。」

「おお、喋ったよ!」

「喋ったね。」

「喋るまで、随分かかったけどな。」

「万里さん、スポン〇ボブのマ〇クのCM思い出しませんでしたか?今。」

「少し思った。」

「デスヨネー。」

いづみは、寮の前で寝ていた事について覚えているか聞いてみた。

「……わからない。」

「え!?」

「記憶喪失ッス!?」

「え!?本当に!?すっごー……。」

いづみも驚きながら
「自分の事わかりますか?」と聞いた。

「名前は……。…すー。」

「話してる途中で落ちるな!」

万里が起こすと
「……御影 密。」と答えた。

「ふむ、名前は憶えているのか。」

「綺麗なお名前ですねー!」

丞は「記憶喪失じゃないのか!?」と不思議そうな顔をした。

「一時的に記憶の断片が抜けているのかもしれないな。」

そのほかの情報を集めようと、いづみが聞くも
年齢も、何も覚えていないとの事だった。

「マジで記憶喪失……?ドラマみてぇ。」

「また他劇団のスパイじゃないだろうな。」

「さすがに怪しすぎるッス。普通、こんな大技使わないッス。」

「太一くん……大技て……。」

「はは、太一らしい発想だな。」

「臣も何笑ってんだ!…太一、お前が言うな。」

万里は太一に軽くチョップを食らわせた。

「何か身元を証明するものとか、持ってないのかな。」

キッチンから臣が聞くと、密は「何もない。」と答えた。

「何かの事件に巻き込まれたのかな。」

「とりあえず警察に届けましょうか。」

紬がそう言うと、今までにないほど早い反応で「やだ。」と否定をした。

「警察は嫌だ。」

「でも……。」

「絶対に行かない。」

「………。」

「何やらワケありみたいだな。」

「どうします?行く当てもないなら、しばらく寮に置いてあげるとか。」

「まあ、しょうがないよな。」

「いづみさんが、ここの監督ですし。そうおっしゃるならいいと思いますよ!」

「……あの、お芝居に興味あります?」

「出た!カンパニー名物・総監督の見境ない勧誘。」

「そのうち、いづみさん壺売る仕事とかできそうだよね。」

「おい、うちの監督さんを霊感商法者にするな茅ヶ崎!」

「見境なさすぎだろ。」

「お前らも、人の事言えた義理か……。」

左京がため息をつくと、臣も「秋組のメンツは何も言えないな。」と笑った。

「芝居……?」

「ここ、MANKAIカンパニーっていう劇団の寮なんです。今団員を募集してて、もし興味があれば、どうかなと思って。」

「……わからない。」

「そうですよね……。記憶を無くして大変な時に、すみません……。」

「………。」

「どうせやることもねぇんだろうし、気が向いたら稽古に参加すればいい。」

「何もしないでいると考えすぎちゃうから、それもいいと思うよ。」

左京と東がアドバイスをすると、密は「わかった。」と答えた。

「……。」

「お腹空いてるんですか?」

「もう少しで夕飯もできるんだがな……。何かあったかな?」

「あ、臣さん!私の食べかけのマシュマロならあるんですけど……。万里さん!投げるから取ってー!」

「ん!……ほいっ!これでもいいか?」

「……!」

マシュマロを受け取った密はモクモクと食べ続けた。

「マシュマロ好きなの?」

「……。」

無言で食べ続ける姿を見て、東は
「よっぽど気に入ったみたいだね。」と笑った。

「……すぅすぅ。」

「食いながらも寝んのかよ!?」


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