次の日。
放課後、万里と心はカフェに立ち寄っていた。
「んでよぉ…世界史の木村いんじゃん?俺ばっか当てんだよなぁ…。」
「でもイージーモードなんでしょ?」
「まぁな。」
「ならいいじゃないですか。…進路も固まったんですか?」
「まぁな。早いところさっさと決めとかねぇと、三者面談の時に時間ばっかり取られても困るし?」
「またそうやってダルそうに言う……。」
ふふっと心が笑うと、店員が注文品を運んできた。
「お待たせしました。アイスカフェラテとブラックコーヒーです。」
「ほい、どーも。」
カランカランと店のドアが開き、客が入ってくる。
ここのカフェは基本、観劇後の感想交換の場にされていたり、好きな劇団の情報交換の場としても活用されている。
会話から聞こえる馴染みのある劇団の名前に
2人は聞き耳を立てた。
「ねぇ!今度、GOD座とMANKAIカンパニーがタイマンACTするってよ!」
「本当に!?楽しみーっ!」
「……万里さん、今……。」
「ああ、うちの名前が出たな。」
「タイマンACTって何でしょうか…?」
「タイマンっつーくらいだし、喧嘩でもすんのか?」
「んなアホな……。」
「まぁ、寮帰ったら話あんだろ。……俺らも知らない話がここまで大きくなってんだし。相手はGOD座らしいし?」
「そうですね……。」
「……帰るか。」
「はい……。」
寮に帰ると、案の定
夕食後に全員、談話室に呼び出された。
「GOD座とタイマンACT……。」
「やっぱり本当か……。今日の帰りに心と行ったカフェの中で耳に挟んだんだ。」
「噂はもう大きくなってるみたいですよ……。」
いづみは悔しそうに
「やっぱり……。」と呟いた。
どうやら、ストリートACTの際に話を持ち出されたようだ。
同じ客相手に公演をし、投票で勝敗を決めるものだそうで、
MANKAIカンパニーが勝てば、GOD座の次回公演分の売り上げを全額寄付
負ければ即解散という条件だった。
「つーか、うちも、またえらいところからケンカをふっかけられたな。」
「……そのGOD座の売り上げとやらはどの程度なんだ。それにもよるだろう。」
「そうですよね、しけた金額ならお断りすればいいですし。」
左京と心がいづみに聞くと
「それは聞きませんでした。」
と苦笑いをすると、元GOD座の丞が
「大体、1000万以上です。」
と代わりに答えた。
「「1000万!?」」
「経費を引けば、利益はもっと減りますけど。」
「しゃ、借金が返せます〜!演劇の神様は我らを見放さなかったー!」
支配人は大きな声を上げて喜ぶが、冷静な綴が
「負けたら解散なんでしょ。」とつっこんだ。
「リスクが高すぎる……。」
「でも、どっちにしろ借金返せなかったら解散なわけじゃん。」
「確かに……。私が管理してるだけでも、残りの借金の金額は太いですし……。」
「んー…、確かにそう考えると、ここで頑張るっていうのはいいかもしれません。」
「他に借金返す方法は?」
真澄の質問に、左京は答えた。
「年明けから地方公演の計画を茅ヶ崎妹と立ててはいるが、正直今の収支予測では、期限までの返済はかなり厳しい。」
「詰めるところは私も詰めて計算してるんですけど……、なかなか厳しいですね……。」
「っていうことは、つまり……。」
「……選択肢なしか。」
「ただ、やるかやらないかは、お前ら冬組が決めるべきだ。」
左京の言葉に、紬は考え出した。
咲也、天馬、万里は
「やるなら、全力でサポートします!」
「俺たちに関わる問題だからな。」
「なくなってもらっちゃ困るし。」
と紬に声をかけた。
「……。」
「おい紬、どうすんだ?」
「俺は……………。」
中々結論が出ない紬に苛立った丞は
大きなため息をついた。
「入団早々重責だね。」
「ワタシはこの状況ではやるしかないと思うがね。」
「御影は−−。」
「……ぐーすぴー。」
「まぁ、寝てるだろうね。」
「……紬さん、まだ時間はありますし、決断は急がなくてもいいと思いますよ?何かあれば相談してください。これでも一応リーダー補佐ですから。」
「そうですよ、紬さん。よく考えましょう。」
「………はい。」
紬は静かに頷いた。
prev next
back