次の日。
そろそろタイマンACTの答えを出さなければならないが
紬の調子はあまり良くないままだった。
「………。」
黙って悩む紬に、丞もイライラが止まらないようだ。
「紬くん、元気を出したまえ。ワタシがキミのために詩を考えてきたよ。」
「……え?」
「ん、ん〜遥かなるモンタージュ、繰り返すデカンタージュ……青春の淡きメモリー、消えゆくセオリー、溜め込むカロリ〜。どうかな?」
「……え、ええと。」
紬も苦笑いをしながら、言葉に困ったようだ。
「誉の詩は独創的だね。韻を踏んでて面白いよ。」
「そうでしょう。」
「紬くん、落ち込んだ時はこれを思い出して、元気を出すといい。」
「ありがとうございます……。」
誉なりに、紬の事を心配していることが分かり、いづみも一安心といったところだった。
「……すぅすぅ。」
「密さん、朝練始めるから起きて!」
その後も丞と紬の空気の悪さは変わらず、稽古は終わってしまった。
「紬さん、この後はミーティングでタイマンACTの件について相談しましょう。そろそろ心ちゃんも帰って来ますし。」
「……はい。」
「……すぅすぅ。」
「密さん、大事な話だから起きて!」
「勝負を受けるかどうか決める期限は明日だよね。」
「どうするんだい?」
「……劇団の借金返済のためには、タイマンACTの勝負を受けるのもいいと思います。ただ、俺なんかがリーダーで主演じゃ、やっぱり勝つのは無理だと……俺じゃなくて丞なら……。」
「お前な−−!一度背負った責任を投げ出すのかよ!」
「でも、俺には役者としての才能が……。」
「でもじゃない!お前、いつまで引きずってんだ!」
「−−っ。」
「落ち着てください、丞さん!」
「喧嘩は無意味だ。やめたまえ。」
ヒートアップした丞を
いづみと誉でなだめた後、東が話し始めた。
「まあ、紬の気持ちもわかるよ。」
「………。」
「…そうやってまた、役者の道も投げ出すんだろ。俺はそんな無責任な奴と一緒の舞台には立ちたくない。」
「丞−−。」
紬が呼び止めるも、丞はレッスン場から出て行った。
「話し合いはまた後で改めた方がよさそうだね。」
「……すみません。」
「……私こそごめんなさい。いっぱい背負わせてすぎちゃってました。タイマンACTは辞退しましょう。」
「ボクもそれがいいと思う。力になれなくてごめんね。」
「紬くん、気持ちを切り替えるのだ!新しい金策ならワタシが考えてみせよう!」
「……マシュマロ、食べる?」
「……ありがとう。」
紬はそう言いながらも、自分に決意がないことが欠点だとみんなに話した。
その夜、紬が中庭にいると上からぬいぐるみが降ってきた。
「誰かが窓から落としたのかな……。……かわいい。」
ぬいぐるみを抱き上げた紬は、はぁ…とため息をついた。
「昔みたいに、丞と話したいな……。」
紬の言葉を聞いたのか、ぬいぐるみは一瞬光を放った。
「何だろう、今の光……。」
紬は誰かの落とし物だといけないと思い、自室まで
持ち帰った。
prev next
back