寮生活にも、徐々になれた頃……。

夜、談話室のソファーに座り
1人でぽやーっと雑誌を見ていた心は
後ろから天馬に声をかけられた。

「今はゲームしてないんだな。」

「っ!…天馬くん……。ずっとゲームしてるわけじゃないよぉ!一応私も女の子だし、こーやって雑誌読んで、女磨いてますぅー!」

「コスプレの化粧参考か何かか?」

「うぅっ…!」

「はっ、図星みてぇだな!」

よいっしょ…!っと言いながら心の隣に座った天馬は
雑誌を読んでいる心の横顔をしばらく見てから
少しくせのついた長い髪をひと房手にした。

「うおお…どうしたの天馬くん?」

「いや……綺麗に伸びてるなって……。」

「おぉー…イケメンに褒められた。」

「…女子力どこ行ったよ……。」

「雑誌にその答えは書いてなかった。」

「……学校だとキャラ違うんだろ?真澄から聞いたぞ。どんな反応すんだよ。」

「え?……そう?嬉しいな、ありがとう!って、当たり障りない感じに答えるよ?」

「じゃあそう言えよ!」

「ここ学校じゃないし!」

「へいへい。……至さんと同じ色なんだな。」

「かわいいでしょ?毛先は薄いピンクだよ。」

「本当だ………。ふーん……。」

くるくると自分の指に心の髪を絡ませて遊びだした天馬に
心は「くすぐったい!」といいながら、天馬の手首をつかんだ。

「はは、わりぃ!……でもなんでこんなに伸ばしてんだ?ウィッグ提供でもすんのか?」

「……ちょっとしたおまじない…かな?」

「まじない?」

「そそ、大したこともないくらいなんだけどね……。」
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