その日の夜……
陸は明日の朝帰ってくるとのことで
夜はみんな少し寂しそうだった。

いつものごとく、寝る前に温かいものを取りに行くと
一番で壮五が待っていてくれた。

「…壮五さん。」

「今日はお疲れ様。大丈夫?ちゃんと温まった?」

「はい…大丈夫です!今日は…。」

「ココアだよ。少しいいものが手に入って、さっきまで練ってたから、部屋の中が少し甘い匂いだね。」

「ありがとうございます……。毎日毎日、準備していただいて…。」

「好きでやってるからいいんだよ。」

「でも、壮五さん甘いものあまり得意じゃないですよね?大丈夫ですか?」

「うん、僕のほうには砂糖あまりいれてないんだ。そのかわりにラム酒を少し入れてるよ。」

「大人ですね。同い年なのに壮五さんは落ち着いててすごいな……。」

「そんなことはないけど強いて言うなら…家の関係かな?しつけが厳しい家だったから。」

「そうなんですね…そう考えるとうちもそうだったかも…習い事はダンスに歌に、水泳に書道に…お友達もなかなか遊びに来てくれなくて…。」

「どうして?」

「…私のほうも、家が…そこそこ厳しくて…。でも好きなことはいっぱいさせてくれました。」

「いい家庭だね、うらやましいな。」

「……偽りの家族ですよ、あんなの。」

「え?」

「…なんでもないですよ!そうだ、壮五さんの一口もらえませんか?ラム酒入るとどんな感じなのか気になって…。」

「えっ!?もう僕、何回か飲んでるけど…っ!?」

「あ、すみません…迷惑ですよね。」

「いや、そうじゃなくて!逆に奏は嫌じゃないかなって!」

「何がですか?」

「…いや、なんでもないよ。……はい、熱いからちゃんとふーふーするんだよ?」

「壮五さんありがとうございます!」

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間接キスごときで、僕は子供か…
どれだけ背伸びして、君の前では大人でいようとも
ちょっとしたことで動揺してたら
意味はないね…。

マグカップを渡すと無邪気に笑いながら喜んで
冷ましながら少しずつ飲む奏は子供っぽくてかわいくて…

やっぱりラム酒は大人の味ですね…

なんて苦く笑いながら

甘いココアが私にはちょうどいいです…って僕に
マグカップを返してきた。

ああ、今の僕にも
まだ、君が飲んでいる甘いココアのほうが似合ってるのかもしれないね

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